あなたのスマートフォンには、どんなケースが付いているだろうか。売れ筋は1000円程度というケース市場において、1万円以上の商品を取りそろえる国内ブランドがある。「33万円のワニ革ケース」も完売させたというブランド「GRAMAS」の成り立ちについて、運営会社の社長に聞いた――。

「高いスマホケースは売れない」常識を打ち破る

1000円前後で買えるスマホケースが並ぶ家電量販店で、2万円でも売れているスマホケースがある。

この値段を聞いた方の多くは、「そんな高いスマホケースが売れるのだろうか?」と思うのではないだろうか? 「スマホを買い替えるたびに必要となるスマホケースは安価なほうが売れる」とも。

ところが、そんな予想を見事に裏切るかのように、そのスマホケースは2014年に発売するやいなや大ヒットとなった。ブランド名は「GRAMAS(グラマス)」。日本で初めての一枚革を使用した横開き手帳型のiPhoneケースのブランドである。

ブランドはGRAMASを筆頭に、10万円を超える最上位ラインの「GRAMAS Meister(グラマス マイスター)」、合皮を中心としたカジュアルラインの「GRAMAS COLORS(グラマス カラーズ)」の3種を展開している。販売するのは「坂本ラヂヲ」(東京都目黒区)。「高いスマホケースは売れない」と言われていた業界の常識を打ち破った企業である。

GRAMASの歴代商品。左下から時計周りに、日本初の一枚革で作られたiPhone 5ケース(2012)、初めて上代が1万円を超えたiPhone 6ケース(2014)、iPhone 13 Proケース(2021)、最新の iPhone 14 Proケース(2022)。
写真提供=坂本ラヂヲ
GRAMASの歴代商品。左下から時計周りに、日本初の一枚革で作られたiPhone 5ケース(2012)、初めて上代が1万円を超えたiPhone 6ケース(2014)、iPhone 13 Proケース(2021)、最新の iPhone 14 Proケース(2022)。

ヘッドフォンの美しさを追及し、怒られたことも

ではなぜGRAMASは、「高いスマホケースは売れない」と言われる業界の常識を覆すことができたのか?

そこには坂本氏ならではの「美意識」がある。坂本氏は大学卒業後、「アイワ」(1989年)を皮切りに、数社のオーディオメーカーでヘッドフォンステレオやカーオーディオの開発プロジェクトなどに携わってきた。商品開発においては機能性だけではなく、常にビジュアルも重視したという。

特に話題になったのは、あるメーカーで企画したラインストーン付きの女性向けヘッドフォン。安価なガラス玉ではなく、高品質のクリスタルガラス、スワロフスキーを用いることにより、アンテナの高い女性たちから多くの支持を得た。

「ヘッドフォンに社名が入っていない方が美しいと思い、社名を入れずに企画。販売後、社名が入っていないことが社長に見つかり、怒られました」