人目に触れるスマホケースは「手帳型」しかない

「かつてスマホは机の上に置くものではなく、バッグの中にしまっておくものでした。特にビジネスシーンでは、スマホをテーブルに置くのはご法度。商談中にスマホを触るなんて、とてつもなく失礼と見なされていましたよね。しかしスマホやアプリが進化するにつれ、商品の写真を撮ったり、その場で検索したりと、ビジネスシーンでのスマホの登場率が増大。それにより、スマホは人目に触れる存在となりました。

ビジネスシーンであれば余計にスーツに合う上質な本革製で、見た目もいいスマホケースが欲しくなる。また、使用頻度が高くなった分、スマホの画面を確実に守ってくれるふたのあるケースがいい。これらのことをトータルして考えると、手帳型以外の選択肢がなかったのです」(坂本氏)

坂本氏のスマホケースは「GRAMAS Meister」。常に自社の最新商品を身に着け、使用感や改善点を次の商品開発に生かしているという
撮影=プレジデントオンライン編集部
坂本氏のスマホケースは「GRAMAS Meister」。常に自社の最新商品を身に着け、使用感や改善点を次の商品開発に生かしているという

こうした考えをもって、日本初となる横開きの本革製手帳型スマホケースの製作がスタートした。しかし、いざスタートしてみると、日本で横開きの手帳型スマホケースを作れる工場はほぼなかった。2~3社あたってサンプルを作ってもらったこともあったが、坂本氏が納得するクオリティーに達しない。

困り果てて訪れた「Hong Kong Electronics Fair」(香港エレクトロニクスフェア)で、偶然にも坂本氏は横開きの自国の警察手帳を製作する、ある韓国の生産メーカーと出会う。「ここだ!」と坂本氏は思った。

“革オタク”とタッグを組み、構想1年で完成

「その会社は韓国の警察手帳をはじめ、各公共機関に手帳などを収めている信頼できるメーカー。社長はいわば“革オタク”とも言える人で、とにかく革に詳しい。試しにサンプルを依頼してみると、ほぼ完璧なものが上がってくる。100単位でも受けてくれるということもあり、発注依頼をしました」(坂本氏)

「完璧」と言いながらも、サンプルの差し戻しは4~5回あった。ケースの周囲を縫うステッチをミリ単位で変更依頼する坂本氏の注文に、工場の担当者から「できない。コストと時間がかかる」と言われることも多かった。それでも坂本氏は一向に引くことなく、自らの思いを貫いた。

そして構想から1年、ようやく坂本氏が首を縦に振るクオリティーのサンプルが完成した。そこまで厳しい基準を設けたら、さぞや開発費がかかったかと思いきや、「実は開発費はほとんどかかっていないんです」と坂本氏。