「神の心に従わないワクチンを打ったのは間違いだった」

ラジオの「ニュース解説」を聴きながら、運転手の身の上話が始まった。運転手はサンディエゴで新型コロナに感染したという。その後、新型コロナのワクチンを1回打ったが、副反応がひどかったらしい。

副反応が出ることは特別なことでもないが、運転手は、「新型コロナに感染したことで体内には免疫ができたのに、ワクチンを打ったことが間違いだった。神は人間の体を守るために免疫を与えて下さったのに、神の心に従わないワクチンだったから問題だった」と言う。その時、彼はバックミラーにかかっているオーナメントに手を添えた。マリア像だった。

車のバックミラーを触る人
写真=iStock.com/Jay Yuno
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さらに、運転手の独演会は続いた。新型コロナで変異株が次々に出てくる理由について、彼はこう語った。

「バイデン政権はもともと人口減少を目論んでいて、多くの人が死亡する新型コロナの株がどれなのかを実験している」

彼の説明によれば、その時感染が拡大していたオミクロン株の拡散では人口減少が進まないので、そのうち、アメリカ政府は、重症化する可能性が高い新しい株をまき散らすはずだと言う。そんな政府が言うことを絶対に信用してはいけないと諭された。運転手の説明は断定的で、反論は一切受け付けないような口調だった。

「非科学」がちりばめられたトーク・ラジオの中身

後日、運転手から薦められたAMラジオ局の番組を聴いてみた。教えられた周波数にあわせると、KABCというラジオ局だった。また、車に乗っていた時間帯からすると、番組はリオ・テレルという人がホストを務める番組だ。放送は平日の月曜日から金曜日までの午後5時から6時まで。

番組紹介のサイトを見ると、黒人男性の写真が大きく出ている。彼がリオ・テレル氏だ。すぐそばには「リオはトランプ再選を主張しています」と書かれている。テレル氏は弁護士で、トーク・ラジオのホストを務めるだけでなく、保守系のFOXニュースにも頻繁に出演している。

2022年3月23日の放送を聴いた。冒頭、テレル氏は、「共和党も民主党も政治家は嘘つきだ。彼らが嘘をつくのは、リスナーが政治に関心を持たないからだ」と啖呵を切り、既得権益層を否定するところから入った。ただ、このあと、槍玉に挙がるのは、民主党の政治家ばかりだった。