政治家の誹謗中傷や印象論をひたすら展開

この日のお題は二つ。まずは放送の前日に行われた連邦最高裁判事候補に対する議会上院での公聴会だ。公聴会に臨んだのは、アメリカ史上初の黒人女性の最高裁判事としてバイデン大統領に指名されたケタンジ・ジャクソン氏。放送では、共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員による質疑の音声が繰り返し再生された。ブラックバーン氏は南部テネシー州選出の共和党の白人女性議員だ。

放送されたのは、ブラックバーン議員が「女性という言葉の定義は何か」と質問したのに対し、ジャクソン氏が「私は生物学者ではないので答えられない」と応じた短いやりとりだ。

これだけ聴いても何の意味があるのかまったくわからないが、このやりとりを取り上げた意味について、番組ホストのテレル氏は、コーナーの最後で、「ジャクソン氏は、トランスジェンダーの人々への影響があるから答えなかった」と述べ、ブラックバーン議員の質問は、ジャクソン氏のリベラルな立場を批判するという政治的な意図を持ったものであったことを説明した。

テレル氏はそこに至るまでの18分間、ひたすら民主党への誹謗ひぼう中傷をまくし立てた。

ジャクソン氏については、「彼女は女性なのに女性という言葉を定義しなかった。彼女は女性の定義を知っているはずなのに、知らないと議会に対して嘘をついた。彼女がこの国の素晴らしいものを壊そうとしている社会主義者だからだ。彼女は社会主義政党の政治エージェントだ」と批判し、アメリカという国家にとって危険な存在だという印象論を展開し続けた。

少数派の人種に属する女性政治家を「無能」呼ばわり

次のテレル氏のターゲットも、やはりバイデン大統領に登用された人種的マイノリティーに属する女性だった。インド系とジャマイカ系のルーツを持つカマラ・ハリス副大統領だ。検事として頭角を現し、カリフォルニア州司法長官から連邦上院議員、そして副大統領へと一気に駆け上ったスター政治家だ。テレル氏は、アメリカ合衆国のナンバーツーの要職にある人物に対しても容赦ない。

「彼女は極めて無能だ。一方、私は彼女よりは優秀だ。なぜなら、私はこの国で最難関のカリフォルニア州の司法試験に一発で通ったが、彼女は、最初は落ちたからだ。それなのに、なぜ副大統領になれたのだろうか」と自らの試験結果をひけらかして相手を貶めるという、極めて品のない方法で政敵を非難した。