取り残された「若い中間層」にも光を当てる

国会にいたころ、フランスの少子化対策を学ぶ機会がありました。

家族手当や「高校までの学費無料」といったわかりやすい施策だけでなく、びっくりしたのは子どもの数が多いほど支援が手厚くなるよう、国が積極的に子育て支援をしていたことです。わかりやすいインセンティブを効かせれば、わかりやすく子どもは増える。ヨーロッパ最高水準の出生率に持ち直したことにも驚きました。

明石市長になり、5つの無料化などを順次導入し、「お金の不安」を軽減。合わせて、さまざまな寄り添う施策で「もしもの不安」も軽減。子育て層の「2つの不安」に本気で向き合ってきました。だからこそ、「安心して我が子を育てられるまち」として明石市が選ばれてきたのです。人はもしものときの安心がないと、お金だけでは動きません。

貧困対策は全国どこでもやっていますが、支援から取り残された中間層も苦しいのが今の日本です。分断せず中間層にも光を当てる。若い中間層は共働きが多く、明石に引っ越してきたら家を買い長く住まれる方がほとんどですから、税収増、新たな市民サービスの実施につながります。人が増えれば商売も繁盛、地域経済も潤うという戦略でもあります。

行政が子どもにお金を使えば良い循環が生まれる

難しいことではありません。必要なのは、完全な「発想の転換」です。

最初に「事業者」を支援するのではなく、まずは「子ども」から支援する。「企業」でなく、消費者である「市民」の側から始めるからこそ経済が回り、持続可能な好循環につながります。

「子育てや教育にお金がかかりすぎる」「経済的な問題で子どもを持てない」との声が多いことは、国も全国調査で把握しています。

日本では1990年代から給与が上がらず、雇用もさらに不安定になっています。他の先進国では給与も物価も上昇しているのに、私たちの国は値上がりの一方で可処分所得が減り続けているわけですから、生活はますます苦しくなっています。

市民にお金がない。お金がない時代だからこそ、行政が子どもにお金を使う。そうすればお金もまちも、すべてが回り始めるのです。

日本は「異様に子どもを大事にしていない国」

どうして「子ども」なのか。よく聞かれます。

「高齢者は?」「子どものいない人は放置?」それぞれ立場が違いますから、そう言いたくなるのもわかります。

子ども施策がよく注目されますが、明石市は高齢者も、障害者も、犯罪被害者にも全国トップクラスの施策を実施しています。決して、子どもだけではありません。まず「子どもから始めた」だけなのです。

それはなぜか。

私たちが暮らすこの日本が、異様に子どもを大事にしていない国だからです。