※本稿は、泉房穂『社会の変え方』(ライツ社)の第1章<「子どものまち」から始まる好循環>の一部を再編集したものです。
「子どもを応援しない社会に未来はない」
日本で生まれる子どもが減り始めたのは1982年。私が大学生のころです。教育学部で教育哲学を学び、「子どもを応援しない社会に未来はない」と論文に書きました。
残念ながら今もこの社会は、当時からほとんど変わっていません。40年以上、子どもはずっと減り続けています。少子化は加速し、長らく経済も停滞しています。その原因は、私たちの社会が子どもに冷たすぎるからだと思えてなりません。
2011年から、ついに総人口も本格的に減り始めました。そんな年の春に、私はようやく明石市長に就任。まずは「子ども」です。
日本の政治はむしろ少子化を加速させている
どこもやらないなら、せめて明石市を子どもを応援するまちにしよう。
「こどもを核としたまちづくり」を掲げ、幅広く子ども・子育て施策を展開。子育ての経済的な負担を軽減する「5つの無料化」(注)もその1つです。
(注)18歳までの医療費、第2子以降の保育料、中学校の給食費、公共施設の遊び場、おむつ定期便(0才児見守り訪問)
たとえば医療費は、18才まで完全無料。市外の病院も無料、薬代も無料です。支払いはいりません。なぜなら、お金はすでに市民から先に税金や保険料で「預かっている」との認識だからです。
子どもを産みたいのにあきらめさせられる。未来を閉ざす社会が続いています。日本の政治は少子化対策でなく、むしろ少子化を加速させているとしか思えません。
市民の声、切実なニーズに応えるのが政治の役割です。
明石市では、子育てサービスを独自に無料化するだけでなく、困っている市民に「寄り添う」施策も順次拡大。国が動くのを待つことなく、子どもに関することは「あれも、これも、全部やる」。まちのみんなで子ども施策を進めてきました。