全国62の中核市の中で人口増加率1位を達成

明石市の本気が口コミなどで伝わり、周辺から続々と子育て層が集まってきました。人口は過去最多となり、10年連続で増加。2020年の国勢調査では、全国の中核市(人口20万人以上の指定を受けた自治体)62市の中で、人口増加率が1位になりました。

誤解されがちですが、私はそもそも人口増論者ではありません。

人口を取り合うような発想でもなく、いかに市民一人ひとりが暮らしやすいまちをつくるかをベースにしています。子どものころから、冷たい社会を変え、やさしい社会をつくることを追い求めてきた立場です。明石のまちづくりが評価され、その結果として、人が集まっているに過ぎないとの認識です。

とはいえ日本全体でみると、人口減少は避けがたい流れ、少子化も歯止めがきかない状況です。それなのに、国もほとんどのまちも、いまだに子どもを放置している状況です。不十分な環境を変えるのは政治の役割。一刻も早く整備すべきと、国会などでも強く訴えてきました。

明石市は、まず子どもから始めました。

子育て層が増えると、まちは活気を取り戻します。商店街の売上は伸びる。新規出店も増える。住宅建設も続きます。地域経済も上向き、市の税収も増える。増えた財源は子どもだけでなく、障害者や高齢者、まちのみんなへの新たな施策につながります。

子どもから好循環が生まれ、回り始める。そのことを証明したのが明石のまちづくりです。

閉店した駅前のダイエーが放置されたままのまちだった

明石市は大都市・神戸のとなりにある、コンパクトなまちです。南側には海が広がり、港では日本一のタコが揚がる。明石海峡の対岸は淡路島です。

明石焼き
写真=iStock.com/yasuhiroamano
※写真はイメージです

「神戸も大阪も近いし、家も安いから、人口増えるに決まってる」と言う方もいます。たしかに住むには好立地かもしれません。でも、それだけで人が動くとは考えていません。

私が市長に就任する前、中心市街地はまさに空洞化していました。明石駅前の一等地にあったダイエーが2005年に閉店した後、放置されたまま。さびれた地方のシャッター通りそのものでした。阪神・淡路大震災から市の財政は悪化しており、市の基金(貯金)はすでに2000年から毎年赤字続き、人口も減少傾向で、明石のまちは衰退しつつあったのです。

時代は変わっているのに、行政だけが漫然と従来のままなんて、ありえません。すべてが右肩上がりに成長する時代は終わりました。まちの未来、方針を決定するのは市長の権限、果たすべき大事な役割です。

まちの特性、プラスとなる良さをどう活かし、マイナスとなる弱みをどうクリアするか。私の方針は最初から明確でした。