子育て支援を重点施策とする兵庫県明石市は、この10年で子ども関連の予算を2倍以上、人員を3倍以上に増やしている。泉房穂市長は「高齢者向けの予算を削ったのではないかと批判されるが、そんなことはない。必要なお金は本当はすでにあるのに、使い方が間違っているだけなのだ」という――。

※本稿は、泉房穂『社会の変え方』(ライツ社)の第3章<「お金」と「組織」の改革>の一部を再編集したものです。

高齢者の小指をつかむ子どもの手
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「予算も人手もない」は思い込みでしかない

「とはいえ予算が……」「人手が足りない」「結局、何かを犠牲にしないと、できるわけがない」。そのどれもが凝り固まった「思い込み」です。まずこの思い込みを捨て、発想を切り替える。お金も人も、足りないなんて口にしている暇などありません。

本当はすでにあるのに、使い方が間違っているだけなのです。

市長就任前、2010年の明石市の子ども予算は126億円。就任後に「こどもを核としたまちづくり」を開始し、必要な予算を優先して確保してきた結果、2021年には258億円。2倍以上に増やしました。毎年10億円以上を積み増してきたことになります。

でも、国とは違い、貨幣は刷れない。保険制度もつくれない。明石市だけが増税したわけでも、債券を乱発して借金を重ねたわけでもありません。

就任10年で予算は2倍、人員は3倍に

特別なことは何もしていません。それでもできました。できることなのです。

どこの家庭でもしている、単なるやりくりを自治体がしただけです。

「気持ち」だけで、施策は実施できません。「予算」もないと続けられない。でもそれだけでは足りません。しっかりやり続ける「人」も必要です。

明石市の子ども施策にかかわる市の職員は、2010年に39人でした。それを2021年には135名、3倍以上に増やしました。

増やしたのは一般の行政職員だけではありません。弁護士や医師、福祉職や心理職など、専門職を全国公募で採用しています。「数」を増やすだけでなく「質」も高めていきました。

つまり、市長に就任してから10年ほどで、明石市は子ども関連の予算を2倍以上に、人員は3倍以上にできたのです。