明石市は決して「金持ちの市」ではない

「そんな大盤振る舞いができるなんて、金持ちの市だからに違いない」。

よく誤解されますが、決して金持ちではありません。中核市の中では、どちらかというと貧乏なほうです。

泉房穂・明石市長(撮影=片岡杏子)
泉房穂・明石市長(撮影=片岡杏子)

コロナ禍前の2019年、同規模で同じ権限を持つ中核市と、一般会計の歳入を比べると、青森市(約27.9万人)は約1285億円、秋田市(約30.6万人)は約1376億円、福岡県久留米市(約30.5万人)は約1301億円。

一方、明石市(約30.4万人)は1068億円です。

他の中核市と比べて200億~300億円ほど市の収入が少ない状況です。さらに言えば、10年前の2010年の一般会計歳入は948億円。今よりもっと少なかったのです。

私も最初は「金がない」「人が足りない」という話を真に受け、勘違いしていました。当初は「本当にない」と信じて動き回りましたが、なかなかうまくいきませんでした。

でも、ようやく本当のことに気がついたのです。

端的に言うと、お金はある。人もいる。お金も人も「別のところに置かれているだけ」だったのです。

「子どもを支援するには高齢者を犠牲に」という誤解

子どもの予算を確保するには、高齢者の予算を回すしかない。

当初は私もそう思い込んでいました。「行政にはお金がない」とさんざん聞かされ、「高齢者への負担で子ども施策ができない」と思い込まされていたのです。けれども実際の現場で市民と向き合うと、その考えは「違う」と気づかされました。

就任してまず、「誰でも市長にもの言える会」を市内各地で開き、回を重ねていきました。市内28カ所の小学校区など地域ごとに、あるいは子ども、福祉、安全などテーマごとに市長懇談会を実施。就任1期目の4年間で延べ63回にわたり、多くの市民から直接さまざまな声を聞いてきました。

2年目には、財政健全化をテーマに「市長と語ろう ~どう使いますか?みんなの予算~」と題して、半年以上かけて意見交換を行いました。

市内の中学校区にあるコミセン高齢者大学、13カ所をすべて回り、高齢者大学校あかねが丘学園明石シニアカレッジでも開催。集まったのは、ほとんどが高齢者です。資料を事前配布し、事前アンケートも実施しました。

寄せられたのは約600件、2500以上の意見。その結果を踏まえ、拡充・推進すべき事業、縮小・廃止すべき事業、財政健全化に向けた事業見直しの考え方や基準、市のお金の使い方などについて直接説明し、会場でさらに意見を聞いて回ったのです。