2022年5月、世界でもっとも売れたスマホはサムスン電子となり、アップルを超えた。韓国の家電やエンタメが世界で評価され、日本は対照的に失速しているのはなぜか。国際ニュース週刊誌『ニューズウィーク日本版』は「その背景には、日本の半分以下という人口の違いがあったのではないか」と解説する――。(第2回/全3回)

※本稿は、栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

イラスト=徳永明子
栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)より
日本にとって近くて遠い国が韓国です。隣国でありながら、国のしくみや文化は大きく異なり、政府間では対立が長い期間にわたって続いています。一方で、映画、ドラマ、音楽など韓国発のカルチャーは何度も日本で流行してきました。そのブームはいまや世界規模です。

韓国の音楽や映画が世界を席巻

【みひろ】時間よ止まれ!

【うめ】どうしたのよ、みひろちゃん。明日、苦手な理科のテストでもあるの?

【みひろ】違うよ、うめさん。このままだとBTSが活動休止になっちゃうからさ……。時間が止まれば活動休止を先延ばしにできるかなって。

【うめ】ああ、韓国のアイドルグループね。日本でも大人気なんでしょう? みひろちゃんも好きなのねえ。すごい人気だこと。でも、活動休止しちゃうの?

【彦】ばあちゃんは、芸能ネタはからっきしだからね。韓国では兵役の問題もあって、メンバー7人での活動はいったんやめたんだよ。そもそもBTSはアジアだけでなく、いまや世界的なグループだよ。アメリカでグラミー賞の候補になったし、ビルボードチャートで首位を獲得したしね。ビルボードの首位になったアジア人は、ばあちゃんも好きな坂本九さん以来だよ。

【うめ】えっ、九ちゃん以来?! 韓国の芸能人といえばドラマ『冬のソナタ』のヨン様(ペ・ヨンジュン)なら、私も好きよ。

韓流はもはや「一時のブーム」ではない

【彦】日本ではかつても韓国ドラマブームがあったからね。でもばあちゃん、もう韓流は一時のブームでないんだよ。完全に定着しているんだよ。BTSのヒット前から日本では東方神起や少女時代などのK-POPが大流行してたしね。エンターテイメントだけでなく、韓国の食品や化粧品なども日本人にとっては身近になってるんだ(※1)

【うめ】あんたは勉強はできないけど、こういうのはやたらくわしいわねぇ。

【みひろ】だよね。

【彦】なんだよ、ふたりとも。最近、韓国のエンタメは、音楽だけでなく、映画やドラマも世界的な人気がすごいんだよ。映画『パラサイト 半地下の家族』はアカデミー賞で作品賞を含む4冠を達成したしね。これは外国映画(アメリカ以外の映画)としては史上初の快挙なんだ。ドラマ『愛の不時着』や『梨泰院イテウォンクラス』はNetflixネットフリックスで配信されて、世界的なヒット作品になっているよ。

イラスト=徳永明子
栗下直也、ニューズウィーク日本版編集部『くらしから世界がわかる 13歳からのニューズウィーク』(CCCメディアハウス)より

※1 2017年ごろには東京・新大久保のコリアンタウンで鶏肉料理「チーズタッカルビ」が話題になりました。また同時期から韓国語で美少女を意味する「オルチャン」を語源とするメイク方法「オルチャンメイク」が流行し、いまもブームは続いています。