「海外メディアが予約でいっぱいの葬儀場を訪れ、中国のネット上でシェアされている動画で、患者で超満員の病院の廊下が映し出されても、12月20~23日のコロナ死者は中国全土でゼロと当局から発表されている」(BMJ)

「中国では薬局の棚から風邪やインフルエンザの薬がほとんどなくなり、抗炎症・鎮痛・解熱剤のイブプロフェン錠も当局の命令により1人6錠までという制限付きで販売されている。ソーシャルメディアに登場する医師は一部の病院では医療スタッフの感染率が80%に達していることを打ち明けている」(同)

中国製ワクチン接種者はmRNAワクチンより3倍重症化しやすい

香港では昨年初め、コロナ変異株のオミクロン株が流行し、約9000人が死亡。これを単純に中国の人口に当てはめると死者は200万人以上に膨らむ。香港で80歳以上のワクチン接種率は43%で、中国本土の80歳以上の接種率と同レベルだ。

しかし香港では米欧製のmRNAワクチンが接種されたものの、中国本土で接種されたのは中国の国産ワクチンだけ。中国シノバック製ワクチンを接種した人はmRNAワクチンを接種した人より3倍も重症化しやすいという研究データがある。

英エジンバラ大学のマーク・ウールハウス教授(疫学)は「オミクロン株は病原性がそれ以前の株に比べ弱いと考えられているが、香港のように入院や死亡を大量に引き起こす恐れは依然としてある。ワクチンの接種率が向上しても(封じ込めから解除に転換した)オーストラリアやニュージーランドで起きたより、はるかに深刻な感染の波や死者が発生する恐れがある」とBMJに語る。

中国は最後のゼロコロナ政策として残っていた入国時の隔離義務を1月8日に終了すると発表した。感染症の分類についてコロナを最も厳格な甲類(ペストやコレラを含む)並みの管理から乙類に1段階引き下げる。変異によりコロナの病原性が弱まり、普通の呼吸器感染症になっていく見通しだからというのが中国当局の公式見解だ。

ハイブリッド免疫は少なくとも数年間、重症化を予防する

これを受けて、米国や英国、オーストラリア、フランス、インド、イスラエル、イタリア、モロッコ、スペインは中国からの渡航者にコロナ検査を義務付けた。

しかし中国で流行している変異株は他の国々でも流行しており、ワクチン接種と自然感染によるハイブリッド免疫が獲得されているため「中国に対する新たな渡航制限を支持する疫学者はほとんどいない」(BMJ)という。