ほかも同様に分解してみよう。
「部下からの報告が少なく、何を考えているのかわからず、コミュニケーションが取れない」については、「部下からの報告や連絡が少ない」のは事実だが、「何を考えているのかわからない」のも「コミュニケーションが取れない」のも思い込みだ。その思い込みから、困惑や苛立ちといった感情が透けて見える。
もう一つ。「先月はノルマを達成できず、このままでは自分を抜擢してくれた社長の期待に応えられず申し訳ない」は、「先月はノルマを達成できなかった」ことと「社長が抜擢してくれた」ことは事実だ。「このままでは期待に応えられない」のは思い込み。そもそも「期待されている」というのも、思い込みの可能性が大きい。思い込みが自分自身をがんじがらめに縛り「申し訳ない」というネガティブな感情を生じさせている。
こんな具合に見ていくと、実は事実と言えるのは、
●不況である
●商品が売れていない
●部下からの報告が少ない
●先月はノルマを達成できなかった
●社長が抜擢した
これだけである。事実よりも思い込みや感情が断然多いのだ。
これで、どんな事実に対して、どんな思い込みを膨らませ、どんなふうに感じて悩んでいるのかがわかった。事実と感情の間に少し“隙間”ができ、自分の心を俯瞰して見られるようになったのだ。
(大沢尚芳=撮影)