ストレスの原因を理解し、「腑に落ちた」という気づきを得る

ステップ2でストレスの原因がはっきりと見えてきて「腑に落ちた」人もいるのではないか。この「腑に落ちた」という気づきは、それ自体が心のデトックス(解毒)になっている。

自分の行動様式と異なる部下にイライラしていたのも、しょせんは自分の支配欲のせいだと気づく。あるポストに抜擢されてプレッシャーを感じていたのも、期待されていると思い込み、どう評価されるかと他人の目を過剰に意識して疲弊し、勝手に苦しんでいたのだとわかる。

そんなふうに、悩みの構造を明らかにするだけで、「たったこれだけのことで、こんなに苦しんでいたのか」と、すっきり解決してしまうケースも多い。

自分が変わることで相手や周囲を変えていく

ステップ2で、変えられるものと変えられないものがあることを学んだ。そこで今度は、変えられるもの、つまり自分と今を変えていこう。

私はコンサルタントという仕事柄、これまでいろいろな会社を見てきたが、戦略会議のはずが、他人や過去の出来事に関する愚痴の言い合いになっているケースが多数あった。

しかし、前述の通り、他人と過去は変えられないのだ。過去は過去、今は今。今の積み重ねが未来をつくる。過去にとらわれ、未来を悲観する暇があったら、今できる最善の対処方法を考えたほうがいい。自分がまず行動を変え、チーム全体に影響を与えることで全体が変わるきっかけをつくるほうが、はるかに生産性が上がる可能性が高いのだ。「今」の延長線上に「未来」があるのだから。

ただし、アクションを起こす際に、気をつけるべきことがある。

ステップ1と2で説明したように、人間は、事実をそのまま事実として受け取らず、思い込みに「支配」「評価」「問い詰め」「依存」といった欲望をからませて、ネガティブな感情を増幅させる傾向がある。ここを理解せず、自分と若手社員のコミュニケーションに問題があるからといって、自分は正しいと押し切り、支配することで相手を変えようとすれば、余計に関係は悪くなる。

そうではなく、自分のコミュニケーション方法を変えて、相手や周囲を変えていくのだ。自分が変わることでしか相手を変えられないと心得よう。勝ち負けにとらわれず、どちらが折れるかといったプライドは捨てることだ。コミュニケーションが取れるようになれば、それでいいのだから。