平成の政治を振り回した「消費税」
(前編から続く)
立憲民主党の枝野幸男前代表による「昨秋の衆院選で消費税の減税を訴えたのは間違いだった」発言の波紋は、まだ収まっていないようだ。発言についての解説は本稿の「前編」をお読みいただきたいが、実は本題はここからだ。つまり「消費税を旗印に選挙を戦うのはもうやめよう」ということである。
野党が「消費減税」を「共闘」の軸に掲げて政権与党に勝てるなどということは、もはや幻想に過ぎない。もっと言えば「いつまでも消費減税を旗印に戦おうとするから、野党は負ける」と言ってもいい。それを端的に示したのが、昨秋の衆院選ではなかったのか。
消費税は、30年にわたった平成の時代において、日本の政治を振り回し続けてきた。これほどまでに日本の政界で、特定の政策がある種のシンボルになっているのは、ほかには憲法問題くらいだろう(もしかしたら憲法以上かもしれない)。
竹下政権によって消費税が導入されたのは、まさに平成が始まった年、1989年4月のことだった(当時の税率は3%)。竹下登首相はその月、消費税導入を見届けたかのように退陣を表明したが、後任の宇野宗佑首相は、夏の参院選で惨敗し、わずか2カ月で退陣に追い込まれた。
大勝した野党第1党・社会党が掲げたのが「消費税廃止」だった。選挙結果を受けて土井たか子・社会党委員長が語った「山が動いた」という言葉を覚えている人も多いだろう。
この参院選で自民党幹事長だった橋本龍太郎氏は、その後1997年、首相として消費税率を3%から5%に引き上げたが、翌98年の参院選で大敗し、やはり首相の座を追われた。
「消費税」を争点にすれば選挙に勝てるという信仰
二つの選挙で自民党に逆風が吹いた要素は、消費税だけではなかった。89年は「消費税・リクルート事件・農産物自由化問題の『3点セット』」と言われていたし、宇野首相自身の女性スキャンダルもあった。98年も、金融不況やアジア通貨危機が選挙結果に与えた影響は大きかっただろう。
しかしどうやら、これらの選挙結果は当時の野党陣営に「消費税を争点にすれば選挙に勝てる」という、妙な「信仰」を生み出してしまった。