同じ消費減税を唱える維新と立憲は親和性がない
こんなことを書いていると「消費減税に反対なのか」という声をいただきそうだが、そうではない。筆者の主張は「消費減税に反対」なのではない。「『消費減税』を旗印に野党がまとまって選挙を戦うことに反対」なのだ。
消費減税を訴える政党があることは否定しない。それを求める国民がいるからだ。政党がこうした声をすくい取ることは、とても大切である。
しかし、2020年都知事選の例を見るまでもなく、消費減税を掲げる野党が「消費減税を言わない」野党と連携して戦うことは可能だ。消費税へのスタンスの違いを脇に置いてでも、まとまるべき大義名分は、いくらでもあるはずだ。
そして、それを真剣に模索しなければ、野党に勝ち目はない。
筆者が「野党が『消費減税』を旗印にまとまろうとする」(つまり、消費減税を言わない野党は許さない)ことに否定的な理由は二つある。
一つは、一口に「消費減税」と言っても、それを言う政治家や政党の政治理念が全く違うこともある、ということだ。例えば、日本維新の会は消費減税を掲げているが、自己責任を重視する新自由主義的な政党だ。低所得者対策の観点から消費税自体に否定的な共産、社民、れいわなどとは、目指す社会像が真逆と言ってもいい。
「ワンフレーズ政治」は必ず瓦解する
そもそも減税とは、政府の役割を小さくするということであり、税金を減らす分、必要な公的サービスは自分のカネで買うべきだという「自己責任の社会」と親和性が高い。もっと言えば、消費減税は結果として、より多く消費する富裕層への減税効果がより高い。時の政権の対応次第では、むしろ格差を拡大する可能性さえある。
だから維新が消費減税を言うのは、彼らが目指す政治と照らし合わせれば、むしろ正しい。そんな社会を目指す維新と、低所得者の目線を重視する共産・社民・れいわが、単に「消費減税を目指すのは同じ」と言うだけで、将来連立を組むことを考えるだろうか。
もう一つは、そもそも「政権選択選挙は、単一の政策やスローガンを旗印に掲げて戦うべきではない」という、強い思いがあることだ。
政治改革(小選挙区制の導入)とか、郵政民営化とか、さらには「政権交代の実現」とか、そういった単純な争点で戦われた国政選挙は、これまでにも何度もあった。だが、こうした選挙で勝った政権が、その後目標を見失って瓦解する姿も、私たちは多く見てきた。
消費減税のような、一見国民受けが良さそうな単一の政策をお題目のように唱えて選挙に勝とうとする「ワンフレーズ政治」はもう古い。小泉政権の郵政選挙(2005年)から17年、民主党政権が誕生した政権交代選挙(2009年)からも、13年がたっている。こんな政治はもう、平成の時代に置いていくべきだ。