岸田政権の支持率は低調だが、野党の支持率が上がっているわけではない。なぜなのか。評論家の八幡和郎さんは「今の野党は高齢者主体の反戦平和の盛り上がりに乗り、憲法改正を阻止することだけが目標になっている。自民党と本気で対峙できる野党が誕生するためには、憲法改正を済ませて選挙の争点から外すことが必要だ」という――。
護憲派の集会で壇上からアピールする立憲民主党の枝野幸男代表(右端)ら=2019年5月3日、憲法記念日、東京都江東区
写真=時事通信フォト
護憲派の集会で壇上からアピールする立憲民主党の枝野幸男代表(右端)ら=2019年5月3日、憲法記念日、東京都江東区

岸田内閣はイヤ、でも政権交代は望まない

この国では政権交代を望む人は圧倒的に少数派だ。昨年の衆議院総選挙直前に行われた世論調査では、「与党と野党の勢力伯仲」が49.4%で「与党が野党を上回る」34.6%、「与党と野党が逆転」は11.4%に過ぎなかった(共同通信社)。

政党支持率でも、立憲民主・共産・れいわ・社民の支持率の合計は多くの調査で10%余りだから、それと符合する。

岸田内閣の支持率は不支持を下回っているが、「どのくらい首相を続けてほしいか」というと、「自民党総裁の任期が切れる2024年9月まで」が52%、「できるだけ長く」が27%、「1年くらい」12%、「すぐに交代してほしい」6%である(NNN・読売新聞)。

国民が望んでいるのは、3年間の総裁任期ごとに政権がたらいまわしされ、国会では与野党伯仲で大胆な改革はできないような政治ということになる。高度成長期ならともかく、平成年間の日本は世界最低クラスの経済成長率で、中国の8倍あったGDPは3分の1になり、中国の膨張で平和も危ういのにのんきすぎる。

世界の野党と日本の野党の根本的な違い

数年前にフジテレビの「バイキング」に出演していたとき、私の役回りは安倍政権支持のヒール役で、坂上忍さんや東国原英夫さんと論戦した。ところが、彼らはいつも最後には「野党に政権を取ってもらいたいとは思わない。自民党のなかで反安倍勢力に抵抗してほしい」といい、私が「野党が政権を担えるように成長してほしい」と途中で議論がねじれた。

世界の政治の常道は、二大政党(政治勢力)が存在し、だいたい10年くらいの周期で政権交代がされることだ。野党も政権を取るつもりだから、与党になったときに困るような反対のための反対はしないで、国民の期待を膨らます大胆な改革を唱える。

ところが、日本では野党は、政権獲得を目標に与党と対峙たいじしていない。自民党が憲法改正を悲願として選挙戦を戦い、野党は阻止することが目標になってしまっている。

しかも、憲法改正発議の条件は、衆参両院で3分の2の賛成だから、どちらかで、3分の1とればいい。だから、選挙公約は思いっきり左にエッジを効かせた現実離れしたものになる。そのほうが、熱心な活動家を動員できて選挙運動もしやすい。