「保守」vs「革新」から「守旧」vs「改革」へ

もうひとつのチャンスは、近刊の拙著『日本の政治「解体新書」 世襲・反日・宗教・利権、与野党のアキレス腱』(小学館新書)で提案したのだが、伝統的な保守か革新かでなく、守旧か改革かの対立軸に移行することだ。それは、大阪で保守サイドから出た維新が、フランスで社会党から出たマクロンがそれぞれ成功したモデルである。

日本の経済社会は、明治とか戦後とかに創られ、修繕でなく買い換えが必要なシステムだらけで、保守・革新の両方の利権が張り巡らされている。それを取り払ったり、新しいシステムに置き換えれば日本は生まれ変わる。

維新の路線はやや新自由主義的だが、マクロンの場合は、もともと社会党出身のオランド大統領の補佐官や閣僚だったので、自由化で経済成長を図るが、そこで得た利益はやや左派的な弱者支援や環境対策などに充てるという発想だ。

マクロンは、社会党政権内で改革を試みたが、党内の抵抗を受け飛び出して、社会党右派、中道派(公明党に似た傾向のキリスト教民主主義者と自民党宏池会的な市場経済重視派)、環境派、共和党改革派などを糾合した。そして2017年大統領選挙の第一回投票で共和党、社会党の候補を上回って極右のマリーヌ・ルペン候補との決選投票に残り、共和党と社会党の支持者の票はほぼすべて獲得した。2022年の大統領選挙でも基本的には同様のパターンで成功している。

国会では、最初の当選ののちの総選挙で「前進」、再選後には再編成して「ルネサンス」という新しい党を結成し、第一党になっている。

日本の革新を担う人物はどこから出るか

もし日本で自民党と二大政党のひとつとして張り合える党が誕生するとしたら、現在の立憲民主党のような高齢者に支持される守旧派でなく、若年層に受ける改革派でないと政権獲得は難しいと思う。

そのリーダーが維新から出るのか、旧民主党系から出るのか、自民党離党組からでるのか、あるいは彗星のように現れるのかは、いずれでも可能だろう。公明党を抱き込むのかどうかも状況次第だ。

かつての細川政権は、細川護熙と武村正義という知事経験者のコンビが母体になったのだし、大阪の維新はタレント弁護士だった橋下徹が創始したのだから、現在の国会議員に候補が限定されるとみる合理性は何もないのだ。

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