仕掛け人は東京と愛媛との2拠点生活
ブラストセトウチの仕掛け人は誰か。一人挙げるとすれば、実行委員長の坂本大典(35)だろう。昨年まで新興メディア「ニューズピックス(NewsPicks)」を社長として率い、現在は親会社ユーザベースの執行役員を務める若手経営者である。
今年4月から生まれ故郷の愛媛に戻り、東京との2拠点生活を始めたばかり。プライベートな時間を使い、自分の経験や人脈を生かして地元を盛り上げたいと思ったのだ。第一弾としてブラストセトウチの実行委員長を引き受け、第1回の開催にこぎ着けた。
そもそも東京に物理的に縛られていなかった。ユーザベースが導入するフルフレックス制に従い、かねて自由な働き方を謳歌してきた。新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが社会全体に浸透したため、なおさらだった。
そんな状況下で、出身地域の再生に全力を傾ける実業家の姿を見て大いに刺激を受けた。「自分は愛媛出身なのに愛媛のために何もやってこなかった。幸いにもリモートワークできるのだから、愛媛に戻ろうと思ったんです」と振り返る。
地域創生のロールモデルは2人いる。一人はグロービス大学院の創設者である堀義人であり、もう一人は眼鏡大手ジンズホールディングスの創業者である田中仁。前者は茨城・水戸、後者は群馬・前橋の再生に向けてさまざまなプロジェクトを展開中だ。
「東京だと同質的な価値観に染まってしまう」
きっかけは、2021年に開催されたオンラインイベントだった。そこで坂本は愛媛出身の弁護士――現在は政治家――である塩崎彰久(46)と対談し、「愛媛で何か面白いイベントやりたいよね」で意気投合したのである。
偶然にも、2人はちょうど愛媛とのつながりを戻すタイミングだった。坂本は東京と愛媛の2拠点生活に入ろうとしていた一方で、塩崎は愛媛から衆議院選挙に出馬して政治家へ転身ようとしていた。
ちなみに、塩崎は米スタンフォード大学や米ペンシルベニア大学ウォートン校への留学経験もある国際派弁護士として活躍してきた。2021年10月の衆議院選挙で初当選し、政治家としてのキャリアを踏み出している。父親は官房長官などを歴任した塩崎恭久だ。
カンファレンスの合間に会場のロビーに現れ、インタビューに応じた坂本。IT業界出身らしく、ブレザーにジーンズというカジュアルないでたちだ。