正しい食事の作法とは、どういうものか。企業やテレビ、映画、ドラマなどでマナー指導を行うマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは「醤油などが垂れないように『手皿』をする人がいますが、これは控えた方がいいですね。大切なことは、お刺身の盛り方や天ぷらの揚げ方に込められた料理人の考えに寄り添う食べ方を心得ていること。それを実践なさる方は素敵です」という――。
※本稿は、西出ひろ子『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
「会席料理」と「懐石料理」の違い
和食には「会席料理」と「懐石料理」があります。これらは「カイセキ」と同じ読み方をするのですが、両者には違いがあります。
日本食の中でも「会席料理」は、正式な日本料理の「本膳料理」を簡略化したものです。現在の会食における和食は、会席料理が出てくるケースがほとんどです。
一方、「懐石料理」はお茶会の流れの中で出される、一汁三菜を基本とした料理のことです。それぞれのルーツを反映するように、「懐石料理は最初に汁物とご飯」「会席料理は最後に汁物とご飯」といった違いがあります。これらの違いを知った上で、実際の会食での食べ方をマスターしておくと、いざというときに安心して召し上がることができるでしょう。
会席料理ではお刺身や焼き魚など、魚料理が数多く出てきます。これらを見事な箸使いでキレイに食べると、周囲の見方も変わることでしょう。
刺身は「左手前から時計回り」に食べる
会席料理における一人前のお造りは、立体的に盛り付けられることが多くあります。そこで、左手前のお刺身から、時計回りに食べていくと、盛り付けを崩さずに、美しく食べていけるといわれています。
料理人にもよりますが、左手前に淡白な魚を盛り付けて、時計回りに濃い味の魚を盛り付けることが一般的です。こうすることで淡白なお刺身からスタートし、徐々に濃厚な味わいを楽しめるからです。