現代の若者たちを指導するときには、どんな注意が必要か。大企業の人材育成や営業接遇コンサルティングを長年務めるマナーコンサルタントの西出ひろ子さんは「今の上司のスタンダードは、部下に忠告、注意はしても、『部下を怒らない』『部下をしからない』。釈然としないかもしれないが、自己防衛のためにも必要なことだ」という――。

※本稿は、西出ひろ子『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

資料を確認するビジネスパーソン
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

現代の若者はしかられることに慣れていない

私たちの時代(筆者は50代半ば)はしかられたり怒られたりしながら、成長してきた記憶があります。社会人になってからも、上司にしかられることは日常茶飯事でした。

ところが、現代の若者たちは家庭でも学校でも、しかられることに慣れていない傾向が多くあります。少し厳しい言葉をかけるだけで、「怒られた」と受け取り、落ち込んだりパワハラだと受け取ってしまったりするのです。部下のために、会社のために、かつ自身を守るために、しかり方をマスターすることが求められています。

上司である以上は日常の業務において、部下に「伝えなければいけないこと」は多々あります。社内の連絡事項であったり、ミスや問題点を正すためのアドバイスだったり、状況や内容はさまざまです。

単なる連絡事項であれば、感情的にならずに伝えられるでしょう。しかし、仕事に関する忠告やアドバイスは、ときに声を荒らげたり、嫌みっぽくなってしまうこともあります。当然、部下はネガティブな受け入れ方をするでしょう。部下のためを思ってのアドバイスが、パワハラと受け取られたら本末転倒です。

「怒る」は自分中心、「しかる」は相手中心

「怒る」と「しかる」の違いは、あなたもご存知ではないでしょうか。「怒る」は感情に任せて言いたいことをぶちまけること、「しかる」は相手の成長のために必要なアドバイスを伝えることです。

自分中心の行為である「怒る」に対して、相手中心の行為が「しかる」ともいえます。

それでも、注意される部下にしてみれば、「怒る」も「しかる」も大差ありません。両者の違いに気づくには、人としての経験が必要です。部下のためを思ってしかっていても、怒っていると受け取られる危険はあるわけです。

今の上司のスタンダードは、部下に忠告、注意はしても、「部下を怒らない」「部下をしからない」です。釈然としないかもしれませんが、自己防衛のためにも必要なことです。一方で、先に、忠告や注意はしても、とお伝えしましたが、これを怒られた、などと言われる可能性も否めない社会になりました。となれば、「部下を注意しない」「部下に忠告しない」も心がける必要があります。