バブル対策には触れず、ゼロコロナ政策の成果を強調
10月16日から22日まで、5年に1度の中国共産党大会が開催された。今回の大会で、習近平総書記(国家主席)の3期続投が確定した。最高指導部の顔ぶれなどを見ても、習体制は予想以上に堅固になった印象だ。ただ、中国の経済運営に焦点を当てると、不動産バブルの後始末やゼロコロナ政策など深刻な問題ある。
本来であれば、共産党政権は何をさておいても不良債権処理を進め、潜在成長率の向上に集中すべきところだ。しかし、活動報告ではそうした考えが示されなかった。むしろ、習氏は、経済成長を低下させた要因の一つである“ゼロコロナ政策”の成果を強調した。今後、政治優先の政策運営はより鮮明になるだろう。
また、情報統制に関連したIT関連分野への締め付けは強まりそうだ。習政権の体制強化優先の政策運営の弊害は大きくなると懸念される。それによって、海外投資家は債券を中心に投資資金を中国から外に逃避することを考えるだろう。資金流出の増加は経済にマイナスの影響を与え、個人消費、雇用の創出は一段と鈍化する恐れが増す。
その結果、中国経済の期待成長率は一段と低下するだろう。中国経済はまさに曲がり角を曲がったとみられる。
経済成長よりも支配体制強化を優先させている
党大会を終えた10月24日、中国本土と香港の金融市場では、チャイナ・リスクを削減しようとする投資家が相次いだ。前営業日から上海総合指数は約2%下落し、香港のハンセン指数は6%超下落した。中でも重要なのが、IT先端銘柄の大幅な下落だ。
香港に上場するテンセント株は約11%下落した。ハイテク関連銘柄で構成するハンセンテック指数は約10%下落した。ニューヨーク時間、バイドゥとアリババの株価(米預託証券ADRの価格)はともに12%超下落して引けた。海外投資家を中心に、共産党政権があらゆる手段を講じて情報統制を強化するとの懸念は、一段と高まっている。
党大会ではっきりしたことは、これまでにまして習氏への権力集中が明確になったことだ。活動報告の内容を確認すると、習氏は経済成長よりも、自らの支配体制強化により多くのエネルギーを振り向け始めている。
その一つとして、習氏は「高い次元の社会主義経済システム構築が不可欠」と発言した。習政権は党の計画と指導が市場原理やアニマルスピリットを上回るとの考えに、より傾斜していると解釈できる。一つのシナリオとして次のような展開が想定される。