「楽しいから創る」が一番強い

Q経済的に安泰になってから、お金を稼ぐモチベーションは下がりましたか?

そうとも言えるし、そうでないとも言えるね。切迫感がなくなったという意味では下がった。

でもそれより、今の私にとって事業創出と金儲けは「芸術」に近づいている[※8]

ビジネスであれ、科学であれ、政治であれ、歴史に名を残すのは芸術家だ。

芸術とは創造性だ。やりたいからやることはすべて芸術だ。ただやりたいからやることといえば、何があるだろう? 誰かを愛することや、何かを生み出すこと、遊ぶことがそうだね。

私にとって事業創出は遊びなんだ。私が事業を生み出すのは、楽しいから、プロダクトに惚れ込んでいるからだ[※7]

私は3カ月で新規事業を生み出せる。資金を調達し、チームを集め、立ち上げる。それが楽しいんだ。自分はこんなことができると知るのはとてもうれしい。利益はほとんどおまけみたいなものだよ。

アイデア会議
写真=iStock.com/SetsukoN
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事業創出が、私の得意になったゲームだ。ただ、モチベーションは目的志向から芸術志向に変わっている。そして不思議なことに、今のほうが前よりずっとうまくできる気がする[※8]

私がなぜ投資を行うかといえば、投資先の人たちのことが好きで、彼らと一緒に過ごすのが好きで、彼らから学ぶことができて、プロダクトに心底惚れ込んでいるからだ。最近ではどんなにいい投資案件でも、プロダクトに関心が持てなければ見送っている。

こういったことは、失敗したらすべてを失うオール・オア・ナッシングの物事じゃない。いろいろやることでこそ、人生の目的にどんどん近づいていける。

大事なのは目的だ。私は若い頃、稼ぐためなら何でもやるつもりだった。もしも誰かに「下水吸引トラックの事業をやるけど、一緒にどうだい?」なんて誘われていたら、「やるよ、稼ぎたいから!」と二つ返事で引き受けていただろう。

でもありがたいことに、そんな機会は来なかった。心から楽しめるテクノロジーとサイエンスの道を歩めて本当によかった。仕事と楽しみを組み合わせることができたんだからね。

私はいつも「仕事」をしている。傍目には仕事をしているように見えるが、遊び感覚でやっている。だからこそ、自分のやっていることにかけては誰にも負けない自信がある。

だって私は1日16時間遊んでいるだけだからだ。私と競争したい人は働く必要があるが、1日16時間週7日も働いていられないから、私には勝てっこない[※7]