一生のうち3つの「大きな決定」

Qこれからスタートを切ろうとしている若い人たちにとって、一番大切なことは何でしょう?

大きな決定にもっと時間をかけることだね。

若いときに下す大きな決定は、基本的に3つある。「どこに住むか」「誰と恋愛するか」「何をするか」だ。

私たちは誰と恋愛するかを決めるのにほとんど時間をかけない。仕事にとんでもなく長い時間を費やすのに、どの仕事に就くかを決めるのにほとんど時間をかけない。

住む場所で人生の軌道がおおかた決まってしまうのに、どの街に住むかを決めるのにほとんど時間をかけない。

サンフランシスコに引っ越すかどうかを迷っている若いエンジニアへのアドバイス。

「君は友人を置いていくのか? それとも置いていかれる側になってもいいのか?」

君が同じ街に10年住みつづけるなら、同じ仕事を5年続けるなら、同じ人と10年つきあいつづけるなら、それを決めるのに1、2年はかけるべきだ。これらはとても大きな影響をおよぼす決定だ。この3つの決定は本当に重要だ。

重要な問いに答えを出すために、すべてを断ってでも時間を確保しなくてはならない。この3つが、おそらく三大問題だ[※3]

東京市街地の航空写真
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「恩」はどんどん先に送る

Q成功した人たちとつきあう方法を1つか2つ教えてもらえますか?

自分の得意なことを見つけて、それを活かして人助けを始めよう。無償で奉仕しよう。恩送りをしよう。なぜ因果応報(カルマ)が働くかといえば、人間には一貫性があるからだ。

だから十分長い期間で見れば、心に描いたことを引き寄せることができるんだ。

だが損得勘定で考えるな――損得を考えていたら、忍耐が尽きてしまう[※4]

昔私が上司に言われたこと。「君はリッチになれない。君は見るからに優秀だから、つねにほどほどの仕事をオファーされるだろう」

Q最初の起業を決意したきっかけは?

私はテック系のアットホーム・ネットワークという会社に勤めていた頃、まわり中の人に――上司や同僚、友人の全員に――こんなことを触れ回っていた。

「シリコンバレーではみんな起業している。誰でも起業できるみたいだな。私も起業するぞ。ここには腰掛けでいるだけだ。私は起業家なんだ」

……別に自己暗示をかけていたんじゃない。意図的に計算して言ったわけじゃないよ。

ただ思っていることを口に出して、本音を言って、率直になりすぎただけだ。でもすぐには起業しなかった。あれは1996年のことで、今よりずっとおっかなくて難しい起業環境だった。

もちろん、みんなに言われたよ。「ここでいつまでも何してるんだ? 辞めて起業するんじゃなかったのか?」「おや、まだここにいたのかい?」ってね。

そこで文字通り居づらくなって、会社を始めたというわけだ[※5]

たしかに、誰もが起業家の素質を持っているわけじゃない。

でも長い目で見て、人の下で働くことが正しくて合理的なことだなんて、どうしてみんなそんなふうに考えるようになったんだろう? とても序列的な生き方じゃないか[※6]