女性に対してかなり高圧的な態度を取ることも
【増田】博愛精神で受け入れようと思っても、ヨーロッパの人たちとしては、「助けられて当然だ」というイスラム圏の人たちの態度を見ると、反発を覚えてしまう。表立ってそういう態度を取られた時に、「イスラム圏の人の中にはそう考える人もいるから、仕方がない」と思えるかどうかは難しいところです。さらにはイスラム教の世界では男性優位なので、女性に対してかなり高圧的な態度を取ることもあります。
【池上】イスラム教といえば、日本では多様性を認めるべきという考え方から、イスラム教徒の女性がかぶるヒジャブ(ヴェール)にも寛容ですが、全身を覆うブルカを着用する人たちが目立つようになっても、同じように寛容な態度で受け入れられるかという問題がありますね。一方、政教分離を厳格に定めるフランスでは公立学校など、公共の場でヒジャブを被ることは認められていません。これは2004年に政教分離の観点から定められた法律に基づくもので、大きな十字架などの宗教的モチーフのついた衣服やアクセサリーを着用することも禁止されています。
【増田】同じEU圏内で、同じくキリスト教的な考え方を文化の基盤としているドイツとフランスでも、政治と宗教の関係は大きく違っています。日本でも統一教会と自民党の関係から、「政教分離をより徹底すべきだ」という声も出てきています。
見直すべき点があるのも確かでしょう。ただ、信教の自由はもちろん、何をどこまで宗教とし、線引きするのかは、各国ともまだ手探り状態です。私が取材したハンガリーやルーマニアでも、キリスト教的なリベラル規範の下に進められているはずのLGBT容認などの多様化政策が、一方で敬虔なキリスト教徒から「聖書に反する」と反発を受ける場面も増えてきていることは見逃せません。
(構成=梶原麻衣子)