お釈迦さまは「食事の節度」について何度も説いた

「食事の節度」については、お釈迦さまの言葉を記した、最古の経典とも呼ばれる『ダンマパーダ』に次のような言葉が登場します。

この世のものを不浄であると思いなして暮らし、(眼などの)感官を抑制し、食事の節度を知り、信念あり、勤めはげむ者は、悪魔に打ちひしがれない。岩山が風に揺るがないように(中村元 訳『ブッダの 真理のことば 感興のことば』岩波文庫)

心のマスターであるブッダが、心のあり方や生きる姿勢を説いた教えの中に、「食事の節度」について教える言葉が何度も登場します。

食事が心身に与える影響を体験的に知っておられたのでしょう。

ご飯とみそ汁
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修行によって体重が10キロ落ち、強い肉体へ

私も食事が体調に及ぼす影響を、身をもって体験しました。

私は大学を卒業した年、22歳で大本山總持寺へ修行に入ったのですが、朝起きてから寝るまでのすべての生活習慣が変化し、2週間で約10キロ体重が落ちました。

学生時代の私は、フルコンタクト空手の競技選手として大会にチャレンジし続けていたのですが、大柄な選手と打ち合っても打ち負けないために72キロの体重を維持していました。特に大学3年生から4年生にかけての2年間は、毎日のトレーニングはもちろん、食事やサプリメント、睡眠にも気を使って過ごしていました。人生であれ以上、自分の体型、体調維持に神経を使った時期はありませんでした。

それが、本山修行に入って一汁一菜を基本とする食事に変わり、運動量に対して食べる量が一気に減ったのです。脚気かっけになり、体重が落ち、微熱や倦怠けんたい感などに襲われるも、冷暖房などはなく、雪が降っても裸足で過ごす生活。それが3カ月を過ぎた頃から、明らかに体調が変化していったのです。

その変化はもちろん、善き変化です。アスリートの食事についてさまざまな蘊蓄うんちくを語り、お金もないのに高価なサプリメントを摂取していた頃よりも、はるかに強い肉体へと変化していったのです。

「禅」とは、「余計な装飾を極限まで削り落とすことによって、物事の本質を見極めようとする」姿勢のことですが、まさに、身をもって禅を体験した感覚でした。