子育てに悩んだとき、何を参考にすればいいのか。福厳寺住職で登録者40万超のYouTubeチャンネルが人気の大愚元勝さんは「お釈迦さまは『子を自分の所有物だと思うな』と説いている。親と子は別人格であることを自覚し、共に成長することを心がけたほうがいい」という――。
赤ちゃんを抱きしめる母
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人間が持つ悩みで最大のものは人間関係

「子育てに正解はない」とは、子育てに迷う親がよく聞く言葉です。確かに、理想の子育て、完璧な子育てなどありえないでしょう。

しかしそうは言っても、大切なわが子の子育てに、失敗したくないと思えば思うほど、正解を求めたくなるのが親というものです。

どんな親も、かつては子どもでした。

子どもは経験したことがあるけれど、親は経験したことがありません。

子育てに戸惑うことが多いのは当然ですし、思うように子育てができないのも当然です。

人間の持つ悩みの中でも、根本的かつ最大の悩みは、いつも人間関係の悩みです。

子どもの前に、夫が、妻が、思うようにはなりません。

夫が、妻が、の前に、自分自身でさえ、思うようにはなりません。

かくして、悩みが尽きないのが、家族というものです。

ブッダがつくったサンガという組織に学ぶ

私自身、子どもがいますし、かつては10年間、幼稚園の現場にもいました。

また、現在も、僧侶のかたわら、学校の運営や複数の会社の経営、僧侶として弟子の育成にも関わっているため、そうした子育て、人育てに関する悩みは、とても人ごとだとは思えません。

ですから、日頃から、心理に関する本、教育に関する本、古いものから新しいものまで、さまざまな研究論文なども目を通します。

けれどもいつも、回り回って最後は、お釈迦さまの「人育て」に行きつくのです。

お釈迦さまは、人間の「心」を知り尽くし、真理に至られた方です。

そのお釈迦さまが、弟子たちに説かれた、人間の苦しみの源である「煩悩」を離れ、安心に至る具体的な道が仏教です。

お釈迦さまは、人々に教えを説かれただけではなく、世間に生きづらさを感じて、行き場所を失った人々に、孤立や自死の選択ではなく、第三の生き場所を提案されました。

それが、サンガと呼ばれる修行僧の集まりです。

仏教は、神など、外の存在に救いを求めるのではなく、自己を修養することによって、安心に至る教えです。そのための人間教育の道場が、サンガです。

そこには、子育てにも応用できる知恵があります。現代の心理学や教育学にも通ずる、重大なヒントがあるのです。