人間が持つ悩みで最大のものは人間関係
「子育てに正解はない」とは、子育てに迷う親がよく聞く言葉です。確かに、理想の子育て、完璧な子育てなどありえないでしょう。
しかしそうは言っても、大切なわが子の子育てに、失敗したくないと思えば思うほど、正解を求めたくなるのが親というものです。
どんな親も、かつては子どもでした。
子どもは経験したことがあるけれど、親は経験したことがありません。
子育てに戸惑うことが多いのは当然ですし、思うように子育てができないのも当然です。
人間の持つ悩みの中でも、根本的かつ最大の悩みは、いつも人間関係の悩みです。
子どもの前に、夫が、妻が、思うようにはなりません。
夫が、妻が、の前に、自分自身でさえ、思うようにはなりません。
かくして、悩みが尽きないのが、家族というものです。
ブッダがつくったサンガという組織に学ぶ
私自身、子どもがいますし、かつては10年間、幼稚園の現場にもいました。
また、現在も、僧侶のかたわら、学校の運営や複数の会社の経営、僧侶として弟子の育成にも関わっているため、そうした子育て、人育てに関する悩みは、とても人ごとだとは思えません。
ですから、日頃から、心理に関する本、教育に関する本、古いものから新しいものまで、さまざまな研究論文なども目を通します。
けれどもいつも、回り回って最後は、お釈迦さまの「人育て」に行きつくのです。
お釈迦さまは、人間の「心」を知り尽くし、真理に至られた方です。
そのお釈迦さまが、弟子たちに説かれた、人間の苦しみの源である「煩悩」を離れ、安心に至る具体的な道が仏教です。
お釈迦さまは、人々に教えを説かれただけではなく、世間に生きづらさを感じて、行き場所を失った人々に、孤立や自死の選択ではなく、第三の生き場所を提案されました。
それが、サンガと呼ばれる修行僧の集まりです。
仏教は、神など、外の存在に救いを求めるのではなく、自己を修養することによって、安心に至る教えです。そのための人間教育の道場が、サンガです。
そこには、子育てにも応用できる知恵があります。現代の心理学や教育学にも通ずる、重大なヒントがあるのです。