「子どもを自分の所有物だと思うな」という戒め
今回はその中から、子育ての大原則と、親が心得ておきたい5つの役割を、紹介します。
まずは大原則。
お釈迦さまは「『わたしには子がある。わたしには財がある』と思って愚かな者は悩む」『ブッダの真理のことば・感興のことば』(岩波文庫)という言葉を残しておられます。
これは「子どもを自分の所有物だと思うな」というブッダからの戒めです。
親、とくに母親は、自分の胎内に子どもを宿し、自分の命をすり減らして子どもを育てます。だからこそ、子どもを自分の分身のように感じています。
もちろん、そのような親の愛情がなければ、幼な子は育ちません。
けれども、子どもはあくまで、親とは別の、独立した人格であることを忘れてはなりません。
親の子どもへの愛情は、時として、子どもを自分の所有物として扱ったり、わが子への執着として、母子ともに苦しめることになります。
次に、親が心得ておきたい役割があります。
1、抱擁と包容
2、躾
3、限界設定
4、慈悲喜捨
5、子離れ
の5つです。
1、肉体的な抱擁と精神的な包容
子育てというのは、親を全面的に信頼して生まれてきた赤ちゃんが、親に全面的に受け止められて、安心を感じながら社会性を身につけていくのを見守る、という作業です。
その作業には、「何があっても家族を守るんだ」という父の強い覚悟と、「何があってもこの子を受け止めるんだ」という母の深い愛情が包容力となって働きます。
この父母からの肉体的な抱擁と精神的な包容という基地があって初めて、子どもは未知の世界にチャレンジしてゆくことができるのです。
お釈迦さまが、設定したサンガは、生き場所を失った人々にとっての基地でした。
サンガには、厳しい身分差別が行われていた当時のインド社会の、どの階級の人であっても、人生に絶望した人を受け入れてくれる包容力があったのです。