座禅や瞑想より手軽にできる「心の整え方」
実は日本には、僧侶でなくとも、日常的にお寺と関わりやすい環境があります。日本には仏教寺院の数だけでも、7万7000以上あるのです。
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が発表した数(2020年9月度)によれば、コンビニエンスストアの数が、5万5852軒ですから、コンビニより多いのです。
調べてみると、家のそばに、会社のそばに、通勤途中に、必ずと言ってよいほどお寺があるはずです。信仰がなくても、宗派を気にしなくてもいいのです。
お寺のそばを通りかかったら、そっと両方の掌を胸の前で合わせ、自らの心に向き合ってみてください。わずか10秒で心が整うのです。
かつてグアム島で、この「祈りの力」を思い知らされた出来事がありました。
ホテルから、無料シャトルバスに乗って街に出たときのことでした。そのバスが満席だったために、運転席のすぐ後ろの立ち乗りをしていた私は、道中言葉を交わして、運転手さんと顔見知りになったのです。
運転手は非常に神経を使う仕事です。私もかつて幼稚園バスを運転していた経験がありますから、運転の仕事がいかに神経を使う、ストレスの多い仕事であるかが分かります。
しかし彼は、バカンスで来ている人々に楽しんでもらいながら、でも絶対に事故に遭わないようにと細心の注意を払い続けている、プロフェッショナルなドライバーでした。
その後も何度か、彼が運転するバスに乗せてもらったのですが、2度目に彼が運転するバスに乗った時、彼の安心感のある運転の秘訣を垣間見た気がしました。
プロフェッショナルな運転手が必ずやっていたこと
やはり運転席のすぐ後ろに立った私は、彼のその陽気な「ありよう」を眺めていたのです。すると時折、彼が運転途中に、胸の前で手を一定方向に動かすことに気付きました。
その動きとは、「十字を切る」動きでした。
そう、彼は運転途中に教会が見えると、都度胸の前で十字を切っていたのです。
時間にしてわずか3秒。その瞬間、彼の心は「感謝と誓願」で満たされていたに違いありません。
「世界中から集う大勢の観光客を、安全に目的地まで連れていく」それが彼の仕事です。もちろん何も彼は、そこまで深く考えて運転していたわけではないと思います。
しかし、「教会が見えるたびに、胸の前で十字を切る」という、無意識のうちに彼が身につけたその習慣が、彼のストレスを和らげ、定期的にプロドライバーとしての緊張感を思い起こさせる。
教会のそばを通るたびに、「祈る」ことが、彼の心身を安定させていたとも言えるのです。