※本稿は、和田秀樹『60歳からはやりたい放題』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
60代以降の人はタバコをやめる必要はない
やめたい人が一定数いるのに、なかなかやめられない二大嗜好品といえば、タバコとお酒です。歳を重ねると、健康のために嗜好品を諦める道を選ぶという話を聞きます。タバコやお酒はその最たるものですが、タバコは基本的に「60代以降の人はやめる必要はない」と考えています。
タバコにはガン以外に大きな2つのリスクがあります。
一つは動脈硬化です。喫煙者は非喫煙者に比べると、明らかに心筋梗塞や脳梗塞になりやすい傾向があります。
もう一つのリスクは、肺気腫です。これは、酸素と二酸化炭素を交換する肺胞という機能が破壊される病気です。肺気腫になると呼吸が非常に苦しくなるので、「ガンになってもタバコはやめない」という重度のタバコ好きな人でも禁煙されるケースが多々あります。
60代未満の人であれば、タバコはやめたほうが人生におけるその後のQOLは上がるので、「やめたほうがいいのでは」とアドバイスしたいと思います。しかし、60代以上であれば、話は別です。
喫煙者と非喫煙者の生存率はほぼ変わらなくなる
過去に浴風会の老人ホームで、喫煙者と非喫煙者の生存曲線を調べたところ、65歳を超えると生存率はほぼ変わらないことが明らかになりました。
なぜこんな現象が起こるのかというと、喫煙によってガンや心筋梗塞になる人は、老人ホームに入る前にすでに亡くなっている可能性が高いからです。ホームに入る時点ですでに何十年もタバコを吸っているのに、肺ガンにも心筋梗塞にもなっていない人は、タバコに強い何らかの因子を持っている可能性が高いです。
60代になって何の病気にもなっていないのであれば、その人自身が喫煙に強い何らかの遺伝子を持っている可能性が高い。ならば、今から節制するよりは、ご自身の体の強さを信じ、他人に迷惑をかけない程度に喫煙したほうが楽しく人生を生きられるのではないかと思います。