コンサルタント会社を経由した金銭授受、および高橋氏との関係は、今回の贈収賄事件と全く同じ構図と言っていい。
高橋氏、竹田氏、電通の名誉のために明記すると、招致委がBT社に送った資金をディアク氏が受け取っていたとしても、日本の刑法上は罪に問われない。しかし、フランスの刑法は民間同士の贈収賄を処罰対象としているため、司法当局の捜査が行われている。
ディアク氏は21年に亡くなっている。フランスで立件されるかどうかは、特捜部の今後の捜査協力次第だろう。
「2030札幌大会」このまま招致すべきでない
オリンピックを巡り電通や高橋氏の名前が取りざたされたケースは他にもある。
東京都は2016年大会招致した際、150億円の招致活動費のうち3分の1以上の約53億円分を電通に委託している。そのほぼ100%が入札なしの特命随意契約だった。
しかも、招致委が抱えた6.9億円の赤字は、複雑な資金のやり取りの結果、電通が実質的に負担した。
これを見る限り、電通は招致段階から資金面でも一体化していると言っていい。
オリンピックは、IOCと電通のためのビジネスと化している。日本において、その電通が組織委と一体化して手掛けた、スポーツマーケティングの歪な構造が、今回の贈収賄事件を生んだことは、この40年の歴史が証明している。
康氏は今回の贈収賄事件をきっかけに、「スポーツビジネスが将来的に浄化される」と期待する。ノウハウを知る高橋氏がいなくなれば、「電通も一からやり直すしかない」という。
このように、東京大会を巡る贈収賄事件の真っ最中にもかかわらず、札幌市は2030年冬季大会の招致方針を変えていない。
だが、人脈とカネで動くスポーツマーケティングの構造的欠陥が、高橋氏の逮捕によって明らかになった今、IOCや電通が従来のビジネスモデルを放棄して透明化を進めない限り、税金を投入するオリンピックを、日本は招致すべきではない。