高橋氏が特捜部に漏らした「本音」

8月17日、東京地検特捜部は紳士服大手「AOKI」ホールディングスから約5100万円の賄賂を受け取ったとして、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会元理事の高橋治之氏を受託収賄の疑いで、AOKI創業者の青木拡憲前会長ら3人を贈賄の疑いでそれぞれ逮捕した。

高橋治之・組織委元理事=2020年3月30日
写真=AFP/時事通信フォト
高橋治之・組織委元理事=2020年3月30日

高橋氏は、組織委のスポンサー契約締結や公式ライセンス商品の製造・販売に関して有利な取り扱いを青木元会長らより依頼され、「みなし公務員」である理事の権限を利用し、2017年10月から今年3月までの間に、自身が経営するコンサルタント会社「コモンズ」の口座に約5100万円を振り込ませ、賄賂として受け取った受託収賄の疑いをかけられている。

高橋氏および青木元会長らは容疑を否定しているが、金銭の授受は認めている。刑事事件としては、特捜部が「みなし公務員」の職務権限をきちんと立証することが不可欠だろう。

ただ、事件の構図自体は極めて単純だ。電通OBの組織委理事が、顔見知りの業者の要望を、電通から組織委に出向している後輩に働きかけ、実現したというだけに過ぎない。

なぜ、それが可能だったのか。スポンサー選定が組織委の裁量に委ねられており、担当する組織委のマーケティング局は電通からの出向者で占められていた。その上、電通が組織委のマーケティング専任代理店であったことが大きな理由だろう。

電通がスポンサー選定を独占しているため、電通出身の高橋氏が働きかけを行うのは容易だったと思われる。

高橋氏は特捜部の調べに対し、「みなし公務員と知っていたら理事にならなかった」と話したと報道されているが、恐らく本心ではないか。

この発言を裏返すと、自らの人脈を利用したスポーツマーケティングの世界における金銭授受を当然視しているに等しいと思える。