原発を維持するなら即刻「国有化」せよ
さて、日本のエネルギー問題、電力事業は今後どうなるのか。私はまず日本の電力業界の構造を変えていくべきだと提案している。日本では電力会社が垂直方向に「発電」「送電」「配電」という3つの事業を行っている。だが、世界では1980年代のレーガン、サッチャー以降、これら3つは明確に分けられ、それぞれ規制緩和している。
今回の福島第一原発の事故で、東電だけの問題ではなく、民間企業では原発のリスクは高すぎて背負い切れないことがはっきりした。この先、少なくとも民間企業では原発はできないだろう。もともといやがる電力会社の背中を押して国策でやっていたわけだから、いまさら驚くには当たらない。
したがって発電部分に関して、35%の原子力を依然として維持したいのであれば、既存の原子炉施設は国が買い取り、必要ならば人材も移して、国策会社として運営するしかない。国家が発電し、国家がオペレーションをし、国家が安全の責任を持つ。民間の電力会社は火力、水力、その他のクリーンエネルギーに専念する。これで責任体制がはっきりする。発電には民間企業や海外からの参入も認めれば数年で必要な発電量は確保できる。
送電部門に関しては、日本全国を網羅する「送電公社」をつくるというのが私の提案だ。すでに行われている中部電力と東電の交渉は利害調整と地元対策に難航、なかなか進まない。が、全国の送電網を一手に預かる送電公社のような組織があれば、糸魚川フォッサマグナの東西グリッドの接合は簡単にできていたはずである。全国に9つ(沖縄除く)ある電力会社は、送電事業を手放したがらないから反対は強いだろうが、日本全体の送電をワンネットワークにまとめるのは一つの案だ。日本は東西に長い島国であるから、北海道と沖縄の間には1時間半の時差がある。したがって電力のピークもずれているわけで、送電を一元化すれば東北から南西にピークロード(最大需要量)を相互補填していくことができる。
もう一つの案は、フォッサマグナのところだけを対象とした公営の東西グリッド接続会社をつくること。これまでは東西の電力バランスが取れていたために融通する必要はあまりなかったが、今後は国家の安全のために500万~1000万キロワットぐらいまではやり取できるようにするべきだ。前述したように費用は1兆円、住民対策を除く工期は2年という試算もあるが、周波数変換が得意なヨーロッパのメーカーなどを入れれば費用は半減すると思われる。明日はわが身の今ならコンセンサスも取りやすいだろう。
最後の配電事業に関しては、現在の9電力がそのままやればいい。以上が電力事業についての将来像である。