自分自身との長い長い戦い

目の前の戦いにこだわるのではなく、「自分に勝つ」、つまり「自分との戦い」だけにこだわればいい。うまくいかないのが人生、勝ちっぱなしの人生なんてないのですから。

誤解しないでほしいのですが、「自分を誤魔化さない」「自分自身に厳しい目を向ける」というのは、衝動や欲望を抑えつつ、修行僧のように歯を食いしばって生きていくことではありません。

自分の弱さや短所、足りないところ、目の前の戦いに負けてしまったという事実……などに向き合いながら、悠然とマイペースで生きていくことです。「自分に負けない」という“ぶれない芯”を意識し続けながら。

10年経っても20年経っても、「自分に勝った」「自分を乗り越えた」とはなかなか実感できないでしょう。それほど長い戦いだということです。

誤魔化したことを自分は知っている…

ただ、戦いの断片は至るところに存在します。

○○部や××課という集団の中で、間違っているとは知りながら、自分を抑えて周りに合わせてしまったときの敗北感。

誠実な上司や実直な部下などが、正しい行動をとったばかりに組織の中で孤立してしまった。そのとき、彼らを守ろうともせず、「多勢に無勢」「長い物には巻かれろ」とばかりに多数派についてしまったという敗北感。

目先の戦いにおける小さな負けではなく、自分との戦いにおける大きな敗北です。自分自身は、自分を誤魔化したことを知っている。自分に負けたことを知っている。

胸を張って自分自身を語れるか

そんなときに人は、その傷の痛みを誤魔化すために言い訳をします。

組織の中で生きていくためには、たぶん、やむを得ない選択だった。
彼らは正しいかもしれないが、やり方を間違えた。
勝ち組に留まるためには、そうするしかなかった。

しかし、いくらそんな言い訳をしても胸の痛みは消えません。他人を誤魔化すことはできても、自分は誤魔化せないのです。

そんな痛みを抱えたまま多数派に収まり、たとえ出世を果たしたとしても、自分に胸を張ることはできません。

胸を張って自分自身を語れるか──それが「自分に負けない」という生き方なのです。

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