数年前から「持ち物を半分にしよう運動」と名付け、“身辺整理”を開始した漫画家・弘兼憲史さんは「持っているモノの多さで幸せは測れないし、人生には背負っていなくてもいいものがある。だったら、“いらないもの”は全部捨てちゃえば」という。このたび上梓したセブン‐イレブン限定書籍『捨てる練習』で明かした“捨てる”コツとは──。(第1回/全3回)

※本稿は、弘兼憲史『捨てる練習』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

ぶれない“芯”がある人、ない人

最近はあまり耳にしませんが、「竹を割ったような」という表現があります。改めて辞書を引くと、「性質がさっぱりして、わだかまりがない。気性に陰険さや曲がったところがない」とありました。

いいですね。

複雑に入り組んだ現代社会だからこそ、せめて自分だけはシンプルでありたい。シンプルに生きたいと考える人が多くなっています。そんなシンプルなスタンスの究極は、“竹を割ったような人”かもしれません。

多くの人は、そんな生き方にあこがれを抱き、わだかまりがあって、陰険で、曲がった性格の人を嫌うのです。

では、シンプルでわかりやすい人と、複雑でわかりにくい人との根本的な違いは何でしょう。

それは「揺るぎない価値観」を持っているか、いないか。「ぶれない芯」があるか、ないか。「譲れない一線」を守れるか、守れないか──ではないでしょうか。

くしゃくしゃになった紙をゴミ箱に投げ込む人々
写真=iStock.com/BraunS
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「芯以外のものは、捨ててしまおう」

いま挙げた「揺るぎない価値観」「ぶれない芯」「譲れない一線」はほぼ同じ意味で、「何があっても、これだけは断固として守り抜く」という、“自分が生きていくための原理原則”と考えてください。

自分の根本=中心にあるべきものですから、「芯(コア)」と呼ぶことにします。

シンプルな人には、ぶれない芯がある。他人がいくら揺さぶっても、決して揺るがない強い芯を持っているのです。

その一方で、芯にかかわりのないことには、まったくこだわりません。守り抜くものは、たった1つ。自分の芯だけでいいと考えているからです。

芯だけは守る、あとはどうでもいい──といういさぎよさが、わかりやすさ、シンプルさを生み出します。そこでぼくは「芯以外のものは、捨ててしまおう」と提案したいのです。