親は誤りを謝罪すべき
私は母親に、長男に謝罪したのかと問うた。
対し母親は、B君には間違った方針だったと夫婦で自覚しているが、しっかりと謝ったことがないと言う。ならばまずは謝罪すべきである。弟も公立に行くというのならば、親の指針にぶれはなくB君も納得できるかもしれない。が、現実は親の見立てが誤っており、結果、B君が犠牲となった。その責任は決して軽くない。
私は、B君への謝罪は話の流れで気軽にするものではなく、リビングのテーブルをはさんで座り、彼と向き合い、夫婦で手をついて、お父さんとお母さんは間違えていた、想像が及ばなかった、大変申し訳なかったと正式に執り行うべきだと告げた。さらに、可能であれば、私立中学にかかる費用80万円×3年分の金額が入った通帳をB君に渡すことまでしてもいいとも言い添えた。これは、両親の指針がお金を惜しんで為したことではないことの証明のためだ。
謝罪したうえで、B君の親は高校進学であれ、大学進学であれ、今後、全面的にバックアップすることを彼に約束すべきだ。さらに彼の美点を言葉にし、その美点を活かす進路を必ず見つけてほしいとも伝えたほうがいい。進学、進路選択の成功は、その新しい場で豊かな人間関係を築きえたかという点にある。美点を見つめ、学校見学を数多くこなし、そのうえで高校は通信制を選んだとしてもかまわない。親が謝罪の意を明確にしなければ、B君は、親は何かをごまかしていた、と一生思い続けることになる。
大学進学に意欲があるならば、学びたいテーマを決め、恩師となる候補を探し出し、目標の大学を見出すことができれば、B君は本来の自分の良さを発揮しうる場に身を置くことができる。何よりも大学入試は不登校という経歴を問題としない。点数を競う入学試験ならば、条件は卒業見込みという証明だけである。
B君の母親は盛んにメモを取り、面談が終わるとそそくさと帰宅した。後日、届いたメールには、しっかり謝罪をした、お金は渡さなかったがバックアップを精一杯するということは告げたと書かれていた。さらに、その言葉を受けてB君が一つの変化を示したとも記されていた。
何でも、弟の学校選びに積極的に関与するようになったらしい。彼は、学校選びの重要性を自身の体験から深く自覚し、弟を思い助言したのだ。その後、B君がどんな人生を歩んだか定かではないが、その進路選択に大きな間違いはなかったと推測している。
食卓でお子さんは友人の話をしていますか?
子供が食卓で語るのは、友人に関する話がほとんどであるはずだ。
それを通じて、親は会ったこともない子供の友人を身近に感じることすらある。ゆえに小学校高学年、中学1、2年時の子供の何気ない会話を聞き逃してはならない。そこで友人の話が出てこなくなった場合、子供の希望する習い事や塾に通わせるという第二の集団に属する道を考えるべきだ。
ここで取り上げた事例とは逆に、親しい友人が公立に行くので私立は嫌だと言った際には、私立中学の学校見学を重ねつつ、公立進学も視野に入れたほうがいい。その友人と別れたくないという気持ちが強ければ強いほど、私立中学への進学熱は冷め、塾での勉強の成果も上がらない。
鍵は、子供の性格とその周囲にある豊かな人間関係の構築である。子供が子供である以上、その主導はまず大人である親から始めなければならない。