※本稿は、藤野英人『プロ投資家の先の先を読む思考法』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
「先の先を読む」のは、トランプの神経衰弱のようなもの
「先の先を読む思考力を鍛えたり身につけたりすることができれば、投資で成功する確率が高まるに違いない」――そんなふうに期待してこの本を手にとってくださった方も多いでしょう。
その期待にできるだけ誠実に応えるため、まず最初に大前提をお伝えしたいと思います。
それは、「未来を予測するのは、非常に困難である」ということです。
もしかすると、ちょっとがっかりした方もいるかもしれません。
しかし、「未来が完全にわかる」という人がいたら、それは嘘つきの類ではないかと思います。
もちろん、簡単なことではないとはいえ、未来をある程度予測することは可能です。
私自身がいつもイメージしているのは、トランプの「神経衰弱」です。
未来を「めくられていないトランプのカードがたくさん並んでいる状態」だとすると、私たちが日々、さまざまな情報を見たり聞いたりすることは、カードの1枚がめくられて「それがなんのカードか」を知ることと似ています。
トランプがすべてめくられていなくても、私たちは何枚かのめくられたカードを確認することによって、「全体の中でまだめくられていない札はなんなのか」を予測することができます。
先の先を読んで未来を予測することは、トランプや麻雀のようなものだと言ってもいいかもしれません。
「場に出ているもの」と「手元の札」を見ながら、自分の周囲や対峙している相手にこれからなにが起きるのかを考えるのです。
もちろん、未来予測にはゲームとは異なる不確定要因もあります。ひとたび大きな事故や自然災害、パンデミックなどが起きれば、前提を変えて予測を修正していくことが重要になります。
トランプや麻雀にたとえていることからもわかるように、私は自分の「先の先を読む思考力」が完全なものだとは思っていません。未来を予測しようとするときは、ほとんど真っ暗な闇の中にいるようなものです。
しかし暗闇の中でも幾筋か、光の筋を見つけることはできます。
その光の筋を束ね合わせ、「ほぼ確実な未来」や「起きるかもしれない未来」を見出していくのです。
これは、一筋の光もない真っ暗闇にいるより、はるかにマシなやり方だと思います。いくつかの光の筋を追っていけば、これから進もうとする道の先になにがあるのか、自分の予測を日々修正していけるからです。
そしてそのように日々を重ねていけば、結果的に正しい道を選んで歩んでいけるのではないかと思うのです。
未来予測というのは不完全なものであり、なにか不測の事態が起きれば修正していくことも不可欠です。
しかし「先の先を読む思考力」を鍛えて未来を予測しようとし続ける人は、そのような努力をしない人やあてずっぽうで生きている人よりも、ビジネスや投資で成功しやすいでしょう。
もちろん趣味の世界を満喫するなど人生を楽しむという意味でも、そのような思考力を持っている方が、世界が広がりやすいに違いありません。