子供たちは矛盾と戦っている

例えば、以前は読めなかった漢字が読めるようになったとか、計算が少し速く正確になったとか、長時間落ち着いて机に向かっていられるようになったとか、毎日一緒にいる親の目には留まらないほどの小さな変化かもしれませんが、その小さな変化が次の変化を招き、子どもたちはひとつひとつ階段を上がって、自分なりの勉強のコツをつかんでいくのです。

その道のりを経てやっと「成績の変化」が目に見える形で現れてきます。そこに至るまでの変化の過程では決して焦ってはいけないのです。ところが、大半の保護者の子どもに対する評価軸は最初から「成績」だけです。

子どもが頑張って小さな変化を続けていても、その「頑張り」を評価することはなく、「成績」が変化しなければ子どもに向かって「頑張らないのだったら、もう塾はやめなさい」という言葉を口にする。

親からそう言われたとき、子どもも最初は「自分が悪いことをしてるのかな」と思います。でも考えてみると、自分は毎日学校に行って、塾に行って勉強して、課題をやって、テストを受けている。そのテストもそれなりにできたから「今回のテストはどうだったかな?」と少し楽しみに思っていたのに、返却されたらあちこち「×」になっていて点が悪い。憂鬱な気持ちで家に帰ったら、お母さんに「成績が悪い」と怒られる。「あなたは塾でちゃんと勉強してるの⁉」と怒鳴られる。

「どうして学校に行って、塾にまで行って勉強して、怒られなきゃいけないのか?」。

子どもたちにとっては、矛盾との戦いなのです。

子どもというのは、一度レールに乗ったら、実に見事に進んでいきます。でも大半の子どもは、道半ばに立ちはだかる分厚い壁の前で行き場を失い、足を止めてしまいます。そこで足を止めずにトライできるかどうか? 挑戦する気持ちを奮い立たせることができるかどうか? 一番の早道は、親という壁のほうが変化することではないかと思います。

鉛筆で漢字を練習する子供
写真=iStock.com/Hakase_
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弱点を責める前に「いい部分」を褒めるべき

最難関中学に合格した子どもでも、小6生で勉強方法が「完成」する子はなかなかいません。みんな何かしらの弱点を持ちながら、結果として中学入試に合格していきます。世の中に弱点のない受験生などいないのですから、弱点を完璧に潰すことを夢見るよりも、弱点は弱点で持っていけばいいのです。大事なのは入試本番までに弱点の単元を少しだけレベルアップさせることです。

そのために大切なことは、ご両親が弱点を責める前に、わが子の「いい部分」を見て、まず子どもを褒めることです。

例えば、算数は得意だけど国語が弱いという子どもなら、「算数が得意だ」というのがいい部分です。算数という強みがあるから、親から見ると国語が弱点に感じてしまうわけです。そして弱点を気にするあまり、わが子が算数という「強み」=「いい部分」を持っていることを親は忘れがちなのです。