※本稿は、ボーク重子『しなさいと言わない子育て』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
“厳しさ”と“寛容”のバランスとは
「厳しさ」とは、自分の感情や行動をコントロールしたり、社会の役立つ一員として責任ある意思決定をしたり行動したりすること。一方の「寛容」とは、自分をありのままに受け入れたり、ダメなときに責める代わりに共感したりすることです。
親が子へ向き合うときに、どんな「厳しさ」を見せるべきかというと、一言で言うなら「自分を律する」ことに対しての厳しさを見せるということ。具体的にはこのようなことが挙げられます。
●その子にできる最高を目指す主体性と主体的な行動を求める
●ルールの必要性を説明し一緒に実践する
●ルールを守れないときはきちんと律する
一方、親が子へ向き合うときに持ちたい「寛容」さとは、「個性を認める」「寄り添う」ということ。たとえばこんなことです。
●ルールを破ったときは叱るのではなく、説明する
●「例外」を認める
●子どもの気持ちに寄り添う、応援する
●親の意見と違ってもきちんと耳を傾ける
厳しさと寛容のバランスが良い、子どもを伸ばす「民主型の親」は、このような環境を「声かけ」を使ってつくり出していきます。厳しさと寛容のバランスをとることで、
●正解を言わなきゃ、ママを喜ばせるには何て言えばいいんだろう、嫌われないためには何と言おう、と親の顔色を窺うのではなく、「自分の本音で話せている」と思える
●自分という存在を否定されない
●親の正解を押し付けられない
●自分は自分であっていいと思える
●自分は理解されている
こんな感情が子どもの心に芽生えます。子どもが安心安全を感じるこのような環境がはぐくむものこそ、自己肯定感です。
ほめ方ひとつで子どもは「不安」になることも
自己肯定感とは「無条件に自分の価値を認める」ということ。それは「これができるから」「ほめられたから」などの条件を抜きにして、自分の存在と価値を認めるということです。たとえ失敗したとしても、失望する出来事があったとしても、「それでも自分は大切な存在だ」と思える力です。
生きていればいいことも悪いこともあります。だからこそ、まずは何があっても自分という存在を無条件に肯定できる力が必要になります。私たちはともすれば、条件をつけて子どもをほめ、「そんなあなたを愛している」と伝えてしまいがちです。「いい成績を残せたね」「全国○位だったね」「ピアノの先生にほめられたね」「他の子よりもよくできたね」「塾のクラスがひとつ上がったね」などなど……。
でも、このほめ方を続けると、子どもは不安を抱くようになることすらあるのです。親が喜ぶ条件を満たせているうちは良いけれど、もしそれがむずかしくなってしまったら「そんなあなたは愛せない(そんなあなたに興味はない)」と思われかねないからです(子どもは本能的にそこまで察知しています)。
だから条件つきではなく、ダメなところや未熟なところも含めて「自分には価値がある」。子ども自身がそう思えることが大事です。「自分には価値がある」と、どんなときも思っていられること。それこそが「自己肯定感」の正体です。