NHK党首「質の悪い子供を増やしてはダメです」
選挙を間近に控えた今月3日――NHKの『日曜討論』で、なにか騒ぎがあったようだ。波紋の中心となっていたのは「NHKから国民を守る党」改め「NHK党」の党首である立花孝志氏が、「子育てにまつわる社会保障」のテーマで語った持論である。
立花氏は、子育て支援や教育予算の実現に関する具体策について司会者から問われると、「まず子供を増やせばいいというものじゃなくて、子供の質の問題です。いわゆる賢い親の子供をしっかりと産んでいく。サラブレッドでもそうです、速い馬の子供は速い。プロ野球選手の子供も普通プロ野球は上手いわけです」と持論を展開した。(中略)
その上で、立花氏は「社会保障というのは、結局は質の悪い子供を増やしてはダメです。将来納税してくれる優秀な子供をたくさん増やしていくことが国力の低下を防ぎ、最終的に弱者を守れるというふうに考えています」と畳み掛けた。納税するか否かで優劣を判断する趣旨の立花氏の発言に、「優生思想だ」などの声が相次いでいる。
〔ハフポスト日本版「『質の悪い子供を増やしてはダメ』NHK党の立花孝志党首が日曜討論で発言」(2022年7月3日)より引用〕
「質の悪い子供を増やしてはダメ」「優秀な子供を増やしていくことが国力の低下を防ぐ」――といった主旨の発言が、まるでナチスを彷彿とさせる優生思想的な発想であるとして、大きな批判を呼んでいた。
しかしながら、世間にしばしば出現する「優生思想」的な言説に対して断固として否定的態度を示す人びとも、実際には優生思想と無縁ではない。
たとえば現代人は、ルッキズムや学歴主義に対して批判しながら、個人としてはマッチングアプリを活用し、イケメンだのハイスぺだのと「高品質」な人間を、自分の性的パートナーにするべく選り好みしている。
「底辺職ランキング」に激しい非難の声をあげる一方、自分の子供はなるべく高偏差値の難関校に通わせ、激務で薄給な「底辺の仕事」につかせないようにする。
人間関係では、能力の高い人を歓迎し、無能な人間を排除する。コミュニケーション能力の高さで人間の価値を決める。卓越した実績を残すスポーツ選手に子供がいないと「優秀な遺伝子がもったいない」という。有名大学を卒業した高知能の男性や、金髪青眼の白人男性の精子を保存する精子バンクには、世界中の女性からの注文が殺到する。