7月10日に投開票される参院選ではどこに注目すればいいのか。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「一部では『盛り上がらない選挙』と言われているが、むしろメディア受けする『お祭り型の選挙』のほうが良い選挙と思えたためしがない。今回の参院選では3つの争点に注目するべきだろう」という――。
「お祭り型」の選挙が良かったためしがない
参院選が6月22日に公示され、7月10日に投開票される。今回の国政選挙について政界から聞こえてくるのは「今回の参院選は盛り上がりや見どころが少ない」という、嘆きにも似た声である。
なるほど、客観的に見て、この参院選はメディアの言う「盛り上がり」には欠けているのだろう。だが正直なところ、筆者は「盛り上がる選挙が良い選挙」という発想には立てない。過去にもメディア受けした「お祭り型」の選挙はいくつかあったが、振り返ってみてそれが「良い選挙だった」と思えたためしがないからだ。
例えば、いわゆる「小泉旋風」が吹き荒れた2001年参院選や05年衆院選だ。01年参院選では「自民党をぶっ壊す」という小泉純一郎首相(当時)の雄叫びに国民が熱狂し、こぞって自民党に投票するという珍現象が起きた。いったい、あの選挙で示された民意とは何だったのか。筆者にはいまだに説明ができない。
「郵政選挙」と呼ばれた05年衆院選は「郵政民営化に賛成か反対か」といったシングルイシューで戦われることになった。まるで国民投票のような、こうした単純な争点の選挙を筆者は好まないが、自民党のいわゆる「郵政反対派」が党の公認を外されて無所属で戦ったので、選挙における争点は一応はあったと言える。この選挙もいわゆる「盛り上がった」選挙だったことは論をまたない。
だが、この選挙の翌年に小泉氏が「党総裁の任期切れ」という理由に首相を辞任すると、反対派議員は次々と自民党に復党。選挙で示されたとされる「民意」は、選挙とは何の関係もない自民党の論理で、結果としてゆがめられた。