若者を中心に、個人の性格を16種類に分類するMBTI診断が流行している。脳神経科学者でお茶の水女子大学助教の毛内拡さんは「『心=私』には絶対に変わらない本質があると信じているからこそ、人間は何種類かに分類されると思うのではないか」という――。

※本稿は、毛内拡『心は存在しない 不合理な「脳」の正体を科学でひもとく』(SB新書)の一部を再編集したものです。

小説家が提唱した信憑性の低い性格診断

流行している性格診断や、血液型占いなどというものは、実に本質主義の典型例のようなものです。

ちなみに、若者の間で流行しているMBTI性格診断は、ユングのタイプ論をもとにした、世界45カ国以上で活用されている国際規格に基づいた性格検査とされていますが、提唱したのは学者ではなく小説家で、その科学的根拠は薄いという批判があります。学問的には採用するのが難しい類いのものです。どうやら、韓国のアイドルが取り上げたことでSNSを中心に火がついたそうです。

この診断について知らない人向けに簡単に解説すると、93問の設問に対して、できるだけ直感で答える、制限時間は12分。1問当たり約8秒しかかけられない計算になります。設問の例は、たとえば「他の人が泣いているのを見ると、すぐに自分も泣きたくなる。」に対して、同意する・同意しないをそれぞれ0から3でつけていく。

「当たってる!」と思う人がハマる

そうすると、基本的には四つのカテゴリー(興味関心の方向、ものの見方、判断のしかた、外部との接し方)に対して、相反する性質(外向型・内向型、感覚型・直観型、思考型・感情型、判断型・知覚型)と、すなわち16個のどれかに必ず分類されます。グラデーションはなく、どちらかに必ず白黒つけられるのです。

その時点で、おかしいじゃないか! と怒り出す人はいなくて、それをそういうものかと受け入れる人が大多数であるのが現状です。多くの人に受け入れられているのは、少なからずそれが当たっていると本人が思うからでしょうね。

ちなみに興味本位で私もやってみたので、どうぞ煮るなり焼くなり、ご自由にご利用ください。どうです、私という人間がどういう人かわかっていただけましたか?

【図表2】著者の診断例
筆者のタイプは主人公(ENFJ-A)だった(出所=『心は存在しない』)