「性格は親から遺伝する」は一面的

遺伝子というのはタンパク質の設計図であり、これに基づいて受容体を作るのか・作らないのか、どれくらい作るのかが決められています。

毛内拡『心は存在しない 不合理な「脳」の正体を科学でひもとく』(SB新書)
毛内拡『心は存在しない 不合理な「脳」の正体を科学でひもとく』(SB新書)

たとえば、ある種のセロトニントランスポーターを持たない家系の人は、家族性のうつ病にかかりやすいということが知られています。

私たちの気質や性格が、脳内物質の放出と受容で決まるとしたら、突き詰めると、それを受け取り、取り除く役目を負っているこれらタンパク質のはたらきが私たちの脳のはたらきを規定していると言うことができます。そういう意味では、性格も遺伝するというのは、完全に否定することはできない事実です。

しかし、遺伝子の転写・翻訳は生後の環境によって変化することもわかっているため、一概に“生まれ”だけで決まるとも言い難いのです。

さらに、脳の神経回路は生後の経験によって柔軟に書き換わったり、受容体の発現パターンを自由自在に書き換えたりする「可塑性」という性質を持っています。そのため、とある遺伝子をたくさん持っているから、あるいは持っていないからといって、それが結果としてその人の性質を決めていると考えるのは非常に危険な考え方と言えます。

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