どんな部屋・机にすれば仕事や勉強の作業効率がもっとも向上するのか。脳神経科学者でお茶の水女子大学助教の毛内拡さんは「“片付いている”とされる状態は人それぞれ異なる。自分に最適な環境を作ることが優先事項。ミニマリズムは必ずしも最適解ではない。乱雑な状態に見えても、その人なりの規則に従った“いつものあの感じ”が創造性を高めることもある」という――。

※毛内拡『脳科学が解き明かした 運のいい人がやっていること』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

どんな部屋・机にすれば仕事や勉強の作業効率が一番高いのか

仕事柄、古今東西色々な研究室を訪問してきましたが、そこで目にするオフィスの状態というのは実に人それぞれです。ピカピカに片付いている場合もあれば、書類や本が山積みになっている机の場合もあります。

特に研究者は、机の上にはキーボード以外何も置かないことを徹底している人もいれば、今にも崩れそうな論文の山の中でかろうじて生息している人まで、千差万別です。そこにはこれといった共通点は見当たらず、片付いているからといって別格に仕事ができるというわけでもなく、片付いていないからといって人間として終わっているというわけでもありません。

しかし、片付いている環境が、作業効率を向上させるのは確かです。整理整頓されたオフィスが重要なのは、それが個人の問題だけでなく、周囲にも影響を与えるからです。整理された職場環境は、作業効率だけでなく、働く人のモチベーションや生活環境にも影響を及ぼします。例えば、来客があった時に片付いていないと、この人とは一緒に仕事をしたくないなあと思われてしまっても仕方ありません。

私の研究室では、実験を行うと言う性質上、安全の面からも共有スペースを清潔に保つことが最優先されています。どんなに優れた実験結果を出しても、作業環境が不適切だとそのデータの信頼性を疑われます。私たちは、常に整理整頓の重要性を意識し、実践しています。

作業のオンとオフをスムーズに切り替えるという観点から言えば、自宅であっても集中できる専用の作業スペースを設けることは重要です。多くの人が自分専用の書斎を欲しがる理由は、単にリラックスできる場所を持つというためだけでなく、仕事モードへの頭の切り替えを円滑にするという意味合いもあるのかもしれません。

しかし、環境が常に同じでは、学習や作業の効率が低下することがあります。そのため、たとえば季節の変わり目に模様替えをしたり、照明の配置を変えたり、仕事がひと段落したタイミングでデスク周りを徹底的に整理したりすることで、気分を変えつつ常に最適な作業環境を保つことも重要と言えるかもしれません。