老後を楽しく過ごすためにはどんなことに気を付けたらいいか。医師の和田秀樹さんは「健康診断の結果に一喜一憂する必要はない。細かい数字にとらわれずに、幸せな日常生活を送れているかどうかを考えたほうがいい」という――。(第2回)
※本稿は、和田秀樹『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。
「生きがい」を求めなくても幸せに生きられる
精神科医の仕事をしていて、患者さんからよく聞く言葉が「生きがいがない」です。そんなとき私は「一喜一憂せず、もっと気長に生きましょう」と声をかけます。
生きがいがないのは不幸、という考え方をしてしまうと、生きがいを手にすることだけにこだわってしまい、それがうまくいかないと不幸になってしまいます。何のための生きがい探しかといえば、幸せになるためですね。生きがい探しよりも大事なのは幸せになることだ、といういちばん肝心なことを忘れがちです。だからもっと気楽に生きてください。
目先のことばかりに一喜一憂して焦ってしまうと、本来の目標を見失ってしまうという例は、ほかにもあります。たとえば、自分の子どもにはいい大学に入ってもらいたい。そのためにはまず、いい中学に入学させようと考える親は多いと思います。
「うちの子は能力があるんだから、きっとついていけるはずだ」そう考えて性急に結果を出そうとします。たとえば、小学校のうちから塾に通わせて勉強漬けの毎日を送らせます。ところが子どもは思うように成績が上がらず、親の期待がだんだん重荷になって勉強が嫌いになってしまいます。
どんなに能力のある子どもでも、勉強嫌いになってしまったら成績が下がります。中学受験に失敗すれば子どもは自信を失い、ますます勉強が嫌いになります。これではいい大学などとても望めません。