「高血圧→血圧を下げたい」と考えがちだが…

でも、私立の学校に落ちても、公立の中学や高校から志望校を見定めてじっくりと勉強に取り組み、ちゃんと第一志望の大学に合格する子はいくらでもいます。

最初のうちは成績が悪くても、友人に恵まれたり勉強法を自分で考えたりして、グングンと成績を伸ばす子も珍しくありません。中学受験の失敗など、あとからいくらでも取り返すことができるのです。

そういう子やその子の親は、本当の目標を見失うことなく、目先のことに一喜一憂せずに気長にやってきたことになります。子どものほうも、必要以上に焦ることもなかったし、伸び伸びと中学・高校生活を過ごしたことでしょう。

目先のことばかりに焦ってしまうと、本来の目標を見失うだけでなく、今を幸せに生きることができなくなります。本稿では、一喜一憂するのをやめる思考についてお話ししましょう。

健康診断では、たとえば血圧が高いとか、コレステロールや血糖値が高いといった結果が数値とともに出てきます。とくに高齢者といわれる世代の方々は、数値が悪いと「まずいな」と思うでしょう。

「もう70代なんだから、いつ脳梗塞とか心筋梗塞とか、そういう大きな病気にかからないとも限らない。この血圧の高さは危険なサインなのだろう……」などと不安になれば、まず「血圧を下げなくちゃ」と考えます。

健診結果に一喜一憂する必要はない

ただ数値を下げるだけなら、降圧剤のような薬を飲めば下がります。「標準値に戻ったな、これでひと安心だ」と、たいていの人はホッとします。控えていたお酒や脂っこい料理を復活させたり、毎朝続けていたウォーキングを怠けたりします。すると次の健診でまた引っかかります。「ダメだな、やはり決めたことは実行しないと……」

頭を抱えているシニア男性
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猛反省して自分を戒めます。でも、数値に異常がなければ大いに安心します。「ふう、よかった。これでもう大丈夫だ」と晴れ晴れした気分になり、大きな病気の不安はどこかに消えてしまいます。

ところが、安心したはずの人が、突然の脳梗塞や心筋梗塞で倒れてしまうことが、しばしば起こるのです。「あんなに注意していたのに」「もう数値は下がったはずなのに」などと本人も周囲も首をかしげます。「いったい何のための検査だったんだ」と腹を立てる人もいます。どうしてこういうことが起こるかわかりますか?

健診のたびに数値の上がり下がりに一喜一憂して、本質的なところを見逃しているからです。

たとえば、血圧が高いというのはどういう意味なのか、そこにどんな危険が潜んでいるのかという疑問が頭から抜け落ちているのです。なんとなくこの数値が高いのはいけないと、テレビや雑誌などの情報から漠然と思っているだけではありませんか? 大切なのは目先の数値ではなく、支障なく日常生活を送れているかどうかです。私は、こういうケースは意外と多いと思っています。