「性格=心」は脳内物質の放出と受容で決まる
では実際、私たちの性格(=心)はどういうしくみで決まっているのでしょうか。これも、脳の活動の賜物であるとすれば、それはどう整理すればいいのでしょうか。
脳がどのように動作しているかをかいつまんで説明すると、脳を構成している脳細胞が神経伝達物質と呼ばれる化学物質を、シナプスと呼ばれる軸索と樹状突起の接合部で隣の脳細胞に受け渡すことで情報伝達をするという単純作業の連続です。
脳の中では、シナプス小胞に含まれる神経伝達物質を放出する“送り手”と、それを受け取る“受け手”がリレーをしています。受け手側の細胞には、受容体と呼ばれるタンパク質があって、その種類や多寡によって伝達効率や情報の質が変化します。
「幸せ」も「つらい」も化学物質の影響
いわゆる「幸せホルモン」であるセロトニンや、「快楽ホルモン」であるドーパミンという言葉もだいぶ市民権を得てきたように感じます。
厳密には、セロトニンは「幸せホルモン」ではないし、ドーパミンも「快楽ホルモン」ではないのですが、その正確性はさておき、脳がこういう化学物質で動作していて、その結果として「幸せ」や「快楽」などの精神的な活動が生じ、それが不足すると結果として「心のはたらき」が不調になるんだということが普及してきたのも事実です。このようにわかりやすい言葉でもって啓蒙し布教してきた先人たちの知恵と苦労に感謝します。
その認識の是正はこれからの課題だとして、次にみなさんに覚えておいてほしいのは、これらの物質はただ放出されるだけでは不十分で、それを受け取る必要があるということです。ここで、重要となるのが受容体です。受容体は、細胞膜の海に浮かぶ「はたらくタンパク質」です。
はたらくタンパク質には、他にもこれらの物質を運んで除去するトランスポーターや、細胞の内外の通り道のはたらきをするイオンチャネル、さらにこれらの物質を分解する酵素なども含まれています。これが重要です。