支持率がついに伝統ある社民党を超えたNHK党

それらはみな「優生思想」という名前を直截的には冠していないだけで、論理構造自体は「マイルドな優生思想」にほかならない。

人間の能力や形質にきわめて大きな遺伝的要因がかかわっていることが明らかになっている現代社会で、私たちが他者に対して行う「個人的な選択」は、どうあがいても「社会的な淘汰」の成分を捨象できない。

強いて違いを挙げるとするならば「無能は殺処分しろ」という考えのもとで実際にジェノサイドにおよんだナチスのような「積極的優生思想」と、いわゆるハイスぺやエリートを好むことで結果論的に“無能者”を淘汰する現代の「消極的優生思想」の違いがあるだけだ。

私たちはナチスドイツや中国共産党政府が行っているような「積極的優生思想」に対しては激しく非難の声をあげるが、幸福追求権やパートナーシップ選択の自由といったリベラリズムの美徳でコーティングされた「消極的優生思想」についてはひじょうに寛大にふるまう。これを非難するどころか、むしろ賞賛し肯定すらしている。

立花氏の「質の悪い子供を増やしてはダメ」という言説は、公共電波を使って口にするべきかどうかという問題はあるものの、自分たちがふだん口に出さないだけで、実質的にやっていることにほかならない。

これをいちいち道徳的に非難して見せることになにか意味があるようには思えない。それどころか「立花氏の言動は、自分たちの考え方とは根本的に相容れない、度し難い暴言である」と、道徳的に非難して突き放すことで、人びとから自身の平時のふるまいに含まれている優生思想的な側面を省みる機会を失わせているようにさえ見える。

いくらSNS上で立花氏の評判が悪化しようが、NHK党は最新の調査でまた支持を拡大している。支持率はNHK党が0.5%なのに対し、社民党は0.3%だった(ちなみに自民党35.6%、立憲民主党5.8%、公明党4.8%、日本維新の会5.4%、国民民主党1.4%、共産党4.0%、れいわ新選組0.5%)、ついに社民党よりも支持率が高くなり、ひょっとすると議席をひとつくらい得てしまうのではないか、という水準にまで来ている。

いまの私の関心は、立花氏の「優生思想的発言の是非」云々ではなく、「NHK党」という勢力が持つエネルギーの根源がなんであるかに向けられている。