⑥コミュニケーション
交渉中は、相手の〈オプション〉などが変化することがふつうです。すると、「相手はいまなにを考えているのか」を、その都度相手から探り出さなければなりません。そのための手段が、相手との〈コミュニケーション〉であり、交渉外の場所でも〈コミュニケーション〉をはかっていくことが重要になります。
⑦合意
互いの意志の合致──つまり、交渉の結末です。これが見えてきたら、〈利益〉を思い起こして、「本当にこれで満足できるか?」と自問することが必要になります。交渉の結末は、〈オプション〉によって〈合意〉するか〈BATNA〉を取るかの、ふたつにひとつとなります。
中国人との交渉が「意外と楽」な理由
一般的に中国人との交渉で苦労するとされる点も、「交渉の7つのカギ」を用いれば合理的な対策を取ることができます。
まずいえることは、相手がしたたかな中国人であっても、交渉の鉄則として、〈利益〉〈オプション〉〈BATNA〉に焦点をあてることです。
お互いの〈利益〉に焦点をあてて共通点を見出す「パイ(〈利益〉)を大きくする交渉」をして、もし約束を守らなければ、〈合意〉しないという〈BATNA〉を切ればいいわけです。
もっというと、実は中国人との交渉は意外と楽な面すらあります。なぜなら、相手の〈利益〉がわかりやすく、それは端的に金銭である場合が多いからです。
「いや、中国との交渉には、メンツや人間関係が絡んでくるからややこしいよ」という日本人も多いですが、それについても、相手の〈関係〉のメカニズムを把握して対策を取ればいいだけなので案外簡単です。
合理的な中国人には合理的な戦略で
年輩の日本人(つまり経営層です)に多いのは、相手との〈関係〉にとらわれ過ぎて、目の前の中国人と〈合意〉しなければ「申し訳ない」と思ってしまう面があることです。
中国人は、「乾杯! 乾杯!」と宴席の〈コミュニケーション〉で盛り上げるのが上手ですから、つい勢いに乗って、不利な〈合意〉をしてしまうことがよくあります。
しかし、それは自分たちの〈利益〉と〈BATNA〉を忘れてしまっていることにほかなりません。交渉では、あくまで「自分たちの〈利益〉は達成できたのか?」「本当にこの〈合意〉は必要なのか?」と、合理的に考えることがつねに必要だということです。
その意味では、わたしは経験上、むしろ中国人のほうが合理的だと感じます。