日本の食料自給率について政府は「コメ98%、野菜80%、鶏卵96%」などと説明している。これを信じていいのだろうか。元農水官僚で、東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏は「野菜の種の90%は海外頼みで、鶏のヒナもほぼ100パーセントが海外依存。どちらも輸入が途絶したときの自給率はすでに0パーセントに近い。コメも野菜と同様に種採りが海外でおこなわれるようになる恐れがある。そうなれば、近い将来、日本は飢餓に直面するだろう」という――。(第1回)

※本稿は、鈴木宣弘『農業消滅』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

ロシア軍の攻撃で破壊された食料庫の残骸=2022年3月29日、ウクライナ・ブロバルイ
写真=AFP/時事通信フォト
ロシア軍の攻撃で破壊された食料庫の残骸=2022年3月29日、ウクライナ・ブロバルイ

NHKが予想した「日本の食料危機」

2021年2月7日に放映された「NHKスペシャル」『2030 未来への分岐点(2)飽食の悪夢 水・食料クライシス』は衝撃的な内容だった。

飽食の先進国と飢餓に苦しむ最貧国を隔てている現在の食料システムを、2030年までに持続可能な食料システムに変革しないと、2050年頃には、日本人も飢餓に直面することになるかもしれない、と警鐘を鳴らしたのだ。

実際に、2035年の日本の実質的な食料自給率が、酪農で12パーセント、コメで11パーセント、青果物や畜産では1パーセントから4パーセントと、現在の食料自給率38パーセントを大きく下回る危機的な状況に陥ると、農林水産省(以下、農水省)のデータに基づいた筆者の試算が示している(図表1参照)。

2035年の日本の実質的な食料自給率
出典=『農業消滅』より

このような状態で、2020年から世界的なパンデミックを引き起こしているコロナ禍や、2008年のような旱魃かんばつが同時に起こって、輸出規制や物流の寸断が生じれば、生産された食料だけでなく、その基となる種、畜産の飼料も海外から運べなくなり、日本人は食べるものがなくなってしまうだろう。

つまり、2035年の時点で、日本は飢餓に直面する可能性がある。

我々は、そんな薄氷の上にいるのである。