シンガポールやマレーシアからドバイに鞍替えする人々

では、日本人はどうなのか。

「ドバイに支社がある駐在員以外に、増えているのが起業家や投資家。以前ならば、彼らは似たような政策を打ち出していたシンガポールやマレーシアに移住していたのです。でも両国はコロナ禍の水際対策や移住・起業やビザの条件が厳しくなった、特にシンガポールは不動産や物価が高騰した、各種の税金がかかるといった背景があり、よりハードルが低いドバイに目が向いたというわけです。私の知る限り、この3月から4月に数十の家族が入国し、さらに今秋から移住予定の方も何件もあると聞いています」(前出の平井さん)

在ドバイ日本国総領事館によれば在留届を出している日本人は3359人(2021年10月1日時点)で、無届の在留邦人はもっと多いと推測される。

仮想通貨やFXなどの投資を目的にシンガポールから流れてきた家族は、外見で分かると語る人も多い。ドバイで起業するBさん(52)はこう話す。

「全ての人ではないですが、服装が派手ですね。そして子供をインターナショナルスクールではなく、日本人学校に入学させる傾向が強いみたいです。親が英語を喋れないし、いつでも日本に帰れるようにするためなのかもしれません。子供のお金の使い方が尋常ではないので、学校で浮いているといううわさも聞きます」

日の出が照らすアラブ首長国連邦・ドバイのダウンタウン
写真=iStock.com/Stefan Tomic
※写真はイメージです

日本人が日本人をカモにする構図

しかし、移住者が増えればトラブルも多くなる。

「日本人が起業する際、ドバイ事情に疎く英語力のなさから、登記、オフィス探し、口座開設などすべてのサポートを日本人のコンサルティングに頼ることが多いのです。その際、法外な価格を請求される、だまされるといったケースが増えました」(平井さん)

たとえば、

「会社設立のサポートを地元のコンサルティングに依頼すれば100万円くらいからなのに、日本人のとあるコンサルティングに頼んだら1600万円もかかった」
「法人口座を開くのが一番大変なのに、口座開設ができないライセンスの種類になっていた……。お金だけ取られて悔しい!」
「車の委託販売をしたのに売り上げのお金を払ってもらえない」

といったケースだ。

「一度払ったお金は取り戻すことはできませんが、口座開設のサポートはわれわれの会社で行いました」(平井さん)

平井さんはドバイ裁判所や検察庁の公式通訳も務めているため、これ以外にもいろんな詐欺のケースが増えていることを実感している。

またSNSを見ると、「ビジネストラブルがあった相手を詐欺容疑で起訴したが、逆に相手に起訴し返されてドバイ警察に拘束された」という書き込みもあった。